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翡翠のサクラメント/乙 ページ4

「……ずっと前から、お慕い申しておりました」

月明かりが照らす暗い教会の中、震える声で私は告げる。これが主への裏切りだと分かっていた。どんな処罰を受ける覚悟もできていた。それほど、私は彼への、……神父様への気持ちを抑えることが出来なかった。
神父様はいつもは優しく佇む翡翠色の瞳を大きく見開き、驚いていた。嗚呼、彼は怒るだろうか。怒り、罵り、私を醜い淫売だと叱咤するのだろうか。

そう思うのもつかの間、彼はいつも以上に瞳を細めて柔らかく微笑み、そして私をそっと抱き寄せた。


「……顔を上げて。大丈夫、僕は君を責めたりしないよ」

震えが落ち着いていく。神父様は、なんて慈悲深い御方なのだろう。こんな愚かで穢れてしまった私を許そうとしている。瞳の奥がじんわりと熱くなり、ポロポロと涙が零れた。

「神父、さま……」





「A、僕と……いや」


バサ、と何かを翻す音。そちらへ視線を向けると、おぞましくて、コウモリによく似た黒い羽根が佇んでいた。ひ、と喉から声が零れる。思わず彼から離れようとするもしっかりと腰に腕を回されていて、距離をとることが出来ない。嘘だ。嘘だ。そんなはずは。だって神父様は優しくて。









「俺と、堕ちてくれるんだね。A」

月明かりに照らされた牙が、冷たく、そして残酷なまでに私に絶望を突きつけた。


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作者名: | 作成日時:2018年5月18日 6時

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