毒/乙※グロ ページ1
※食人鬼夢主注意!
ずる、ずる。なにか重い物を引きずる音が暗い森の中でただただ響いていた。その何かを引きずっていた男は木製の古びた小屋の前に立つと、ギィィと軋ませながらボロボロのドアを開けた。ログテーブルに腰掛け、微動だにしない女にそっと声をかける。
「……こんばんは、A。」
声が聞こえたかと思うとAと呼ばれた女は嬉しそうに声の主の方へと振り向いた。そして彼が抱えるものを見て、さらに表情を綻ばせる。
「おかえりなさい、おついちさん!今日も持ってきてくださったんですね」
喜んでくれたなら良かった、と言葉を返してから持ってきたものを調理専用のテーブルへと乗せた。そして愛用の鉈を左手で持ち、強く握り込む。
ぎり、ぎり。ぎりぎり……。
時々、ぴゅっと飛沫が走る。気にしなかった。そんなもの、この男にとってはもう既に慣れてしまっていた。
やがて皿の上へと綺麗に、丹精を込めて盛り付けると彼女の座るログテーブルの上にカタ、と音を立てて置く。
「遅くなっちゃってごめんね、A。さあどうぞ、召し上がれ」
彼女の表情は極上の笑みへと変わる。皮膚をひきちぎる音、液体を啜る音、その一つ一つが古びた小屋の中にこだまする。
やがて終わったかと思うと、彼女は男へと向き合い、うっとりとした声で啼いた。
「ありがとう、おついち。大好きよ」
ぴく、と反応し苦しそうな笑みを浮かべて男は言葉を返した。
「どういたしまして、A。」
彼女が、生まれつきそのものしか口につけられないことは出会って気持ちを伝えたあとに聞かされた。
それでも決して誰かを襲うなんてことをAはしなかった。彼女は自分の体を強く強く憎んでいた。その忌まわしき呪いはAにとってすごく不本意なものだった。
彼女がおかしくなったのはうまく歩けないようになってからだ。
食べる量が増えた。記憶が曖昧になった。時々意識を失った。言葉をうまく繋げられなくなった。
必死に原因を調べたが、答えは簡単だった。彼女の食べるものそのもの自体が彼女にとって毒であったのだ。じわりと体を侵食し、蝕んでいく毒。しかし彼女はその毒を食べる以外に選択肢がなかった。俺がすることはただ一つ、その毒を与え続けることだった。
口元にこびり付く血を指で拭ってやる。するとAは気持ちよさそうに目を瞑った。
これが、僕達の愛。どれだけ僕の手が血で汚れようとも、君が死ぬまでそばにいるとずっと、ずっと誓うよ。
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作者名:造 | 作成日時:2018年5月18日 6時