【d!】85%の敬愛 (ページ4)

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あの日，私は帰宅後疲れを癒す為にすぐ布団に潜った。バイクの音がブンブン鳴り響いて寝不足である。やけに家賃が安かったのはそういうことか？

そして先程から扉が何者かに叩かれている。私はもちろんこの地に友人は居ないし，むしろまともに話したのは昨日の女性1人だけだったから，警戒心しかない。

｢住所変えたからって逃げられると思っとんのか？｣

ドア越しに耳に届く，ここではあまり聞かなかった関西弁。
逃げられるって言ったって私は何からも逃げていないし，そもそも存じ上げない声色。
住所だって自分のは初めて持ったんだ，人違いだろう。人違い以外の何者でもない。

どうするべきか…と唸っていると，何かが壊れる大きな音がした。嘘，家の中入ってきた？
背中に伝う一筋の汗。あまりの恐怖にその場に座り込んでしまった。まだ職場も探して居ないのに私の都会生活は終わるのか？

｢今日こそ“借金”返してもら…あれ？｣

覚悟を決めてぎゅっと目を瞑っていると，私の目の前で低い声色は足を止めた。私に向けて言い放ったであろう言葉の後に，いかにも戸惑っているような素っ頓狂な声が上がる。
ここまで来てやっと人違いだと気付いたのか。薄目を開けて前方を確認する。

そこに佇んでいたのは，長身で緑色の迷彩服を見に纏った男。目元は影で見えづらい。
私が想像していたのはもっとピアスや指輪がジャラジャラしているような男なので，予想外と言えば予想外なのだが，どちらにせよ初対面の男の人だから怖い。自然と手が震えてくる。

しばらくその男はその場に突っ立っていたのだが，急に書類を確認し始めた。男の手元に見える薄い紙には見覚えがあった。確か，あれは昨日の…

｢ようやっと理解したわ。お前，連帯保証人やな？｣

連帯保証人。
いつの日か部屋でアイスを食べながらテレビを見ていた私は，何度かその名称を耳に流したことがある。
連帯保証人とは，借金をした当人以外の人物が当人の借金を肩代わりするというもの。
超絶簡単に言えば，借金が移るといったものである。
お金のトラブルについては昔から口酸っぱく釘を刺されていたし，友人であってもお金の貸し借りはしないと線引きをしていたから，存在を知ってはいたものの自分とは無縁だと思っていた。

そして人違いじゃなかった。
私を見据える彼の目は，細く弧を描いていた。