【d!】85%の敬愛 (ページ3)

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とはいえ先ずは何からするべきなのだろう。
コンビニに行くのさえ気を遣ってしまう。
オロオロトホトボ歩いていると道中でサングラスをかけたいかつそうな人とぶつかり舌打ちされた。

母に某メールアプリで助けを求めるも、返事は『あんたならいける』って。いけてないから連絡したんですけれども？

﹏﹏﹏﹏﹏

不動屋さんに駆け込み訳の分からない説明に促されるままアパートの部屋を借り食べるものを確保するためにスマホのマップを見ながらあちらこちらへ飛び回り家具の配置を気合いで終わらせた私は(ここまで一息)，夕暮れ時のこの街を少し歩くことにした。

日は傾きかけているというのに，街の灯りはギラギラと目を刺すように光り始める。
鈴虫の羽音の代わりに聞こえるのは，若者のぎゃあぎゃあとした騒ぎ声と車の音。

｢あの，すみません｣

唐突に肩を叩かれ(と言っても既に3回は同じシチュに遭っている)，え？と振り向くと清楚な格好をした女の人が立っていた。

｢私，借金を抱えていて｣

俯きがちに長いまつ毛を湿らせながら淡々と話す女性は，どうやら借金を抱えていて家族が暴力を受けているらしい。借金から逃れる方法の一つとして一定数の人が書類へサインすることが必要で，周りに頼める人が居なくて私に頼んだのだと言う。

正直怪しいとは思っていたが，その女性があまりにも哀しそうで，腕や足に見える痣が痛々しくて，恐る恐るだがサインを入れた。

｢有難う。貴方は私の命の恩人です｣

彼女は弱々しくそう笑うと，足早にその場を去っていった。彼女の幸せを密かに願いながら，もうすっかり黒く覆われた空の下で帰路についた。

───そう，あの1つのサインが，私の人生をひっくり返すtriggerになっていたとは知らずに。