拾玖 ページ20
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折れた両脚は筋肉がごっそり削ぎ落とされ
この様子じゃ骨が完治しても歩くことすらままならないだろうと絶望する
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童磨は私を鬼にする気がないと言うが
それはただの戯言だろう
命の確証も、鬼にならない確証もない
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父が鬼殺隊として生きていたというなら
その娘の私が鬼になれるわけがない
あの世でどんな顔をして会えばいいんだ
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この時私は死ぬことが怖くなかった
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日輪刀を掴み、芋虫のように上肢を使い這いながら
部屋を出ようと障子に手を伸ばせば
障子の奥に影が現れ、パタンと音を立てて開かれる
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やはり私の気配が分かるんだろう
童磨の足が私の目の前まで近づく
私が部屋を出ようとしていたことを咎め、治りかけの脚をまた折られるかもしれない
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しかしそんなことはどうでもよかった
これ以上閉じ込められるより、死んだ方がマシだと
うつ伏せの状態で日輪刀を抜いた
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童磨「ヤケクソってやつかい?」
私を見下ろしながら鋭い歯を見せて笑う
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ほとんど上肢の力だけで身体を起こし
骨のくっついていない脚で畳を踏み
震えながらも立ち上がり刀を構える
童磨は「産まれたての子鹿のようだ」と嘲笑う
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『スゥウウウハアアアア…』
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童磨のこと、嫌いじゃなかったんだけどな
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口には出さなかったけど、天涯孤独の私を引き取ってくれた童磨には感謝もしてた
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童磨「へぇ…Aも泣くのか」
そう言われて初めて気がつく、頬を伝う水の感触
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『氷の呼吸 壱の型 氷襲』
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閉じられた金の扇を懐にしまい
虹色の眼を閉じ
何故か無抵抗の童磨の首目掛けて刃を振るった
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『?!』
何故この人は動かない
何故この人は微笑んでる
刃が童磨の首半分を斬りつけていてもなお、
動じず攻撃を受ける童磨に
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私が
何故焦る?
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首が完全に斬れるまであと10cm
私はそのまま刀を振るうことができなかった
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童磨「斬らないの?」
眼を瞑っていた童磨は
気付いたように眼を開け、不思議そうに首を傾げる
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pooky - 面白いですね!応援してます! (2021年3月10日 7時) (レス) id: 012e567f90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:でんでん x他1人 | 作成日時:2020年11月16日 12時