愛を唄おう (ページ3)

今日:4 hit、昨日:9 hit、合計:7,704 hit

・ページ3

少し先から、大きな声で名前を呼ぶ女の声がした。

声的に結構若めだ。

「あ！ままだ！」

突然、ガキンチョが暴れ始めた。

「うわっ！ばか、危ないやろ」

「お兄ちゃん、まま！」

「あ？どれや？」

「あれ！あれ！」

必死に指さしてるようだけど、手が短い上におぶってるから何も見えない。

すると、前から女の人が駆け寄ってきた。

「晴翔！」

その瞬間、その人しか見えなくなった。

赤く高揚する頬、半開きの口元から漏れる吐息、少し湿った髪の毛と首に滴る汗。

思わずゴクリと喉を鳴らした。

「ままー！」

いつの間に降りていたのか、ガキンチョがその人に抱きついた。

「もー、急におらんくなったら心配するやろ！」

「ごめんねぇ…」

「ん、もうどっか行ったらダメよ？」

「うん！ねぇ、見てまま！このお兄ちゃんにね、遊んでもらっとったん。いーっぱい、ぶーんてしてもらったんよ」

興奮気味に話す子供をあやしながら、チラリと俺の方を見た。

ドクン、ドクンと身体中の血液がその動きを早める。

やべぇ、メチャクチャタイプだ。

口説くか？いや、でも下心あるとか思われたくねぇしな。

どうしよう…

「あの、ありがとうございます」

「いや！全然！あのー、可愛いっすね」

うわー！最悪だ！

なんだ、可愛いっすねっ、て！

童貞か、俺は！

「ふふっ、晴かわいいって、よかったね」

「んー！かっこいいがいい！」

いや、違う！…けど、なんとかなった。

「ほんと、ありがとうございます。ほら、晴。お兄ちゃんにバイバイは？」

「お兄ちゃん、バイバイ！」

「あ、おう」

「お待たせー…って、あのボウズどこ行った？」

「やべぇ…」

「あ？」

「俺、恋しちゃったわ」

「はぁ？！」