お花見〜戸狩一家編〜 ページ5
Aと玄弥の結婚式から数年、3人は天王寺組が贔屓にする花見会場まで来ていた。
花見の時期からは少しすぎてしまったが、まだ十分花見はできるほどだ。
2人の愛息子−翔も幼稚園に入り言葉数もずいぶん増えた。
Aの実家である天羽組だけでなく、天王寺組の人々にも愛情を注がれている。
「おかあさん、みて!きれいだねぇ」
「ふふ、そうねぇ」
楽しそうにはしゃぐ翔とAを見ながら、玄弥は言い表せないほどの感情をその胸に抱えていた。
数年前、羽王戦争があった時には想像もできなかった姿。
時々、玄弥は怖くなった。
この幸せがいつか壊れるのではないか、カタギではない自分のそばにいるせいで不必要に2人が傷つくのではないかと。
「おとうさん、はやく!」
「おう、今行くから待っとき」
天王寺組の若頭−大嶽が死んだ時、玄弥は言い表せないほど悲しみに覆われた。
Aが生死の境を彷徨った時、己の不甲斐なさを心から憎んだ。
今では無くなったとはいえ、数ヶ月は悪夢にうなされることが多かった。
元来のフィジカルの強さがなければ、不眠症で倒れていたことだろう。
だが、それに気づいたか否か、Aがある日、玄弥を抱きしめ言ったのだ。
“私も、翔も、貴方より先に死んだりしません。絶対、貴方を1人にしないから、大丈夫。大丈夫ですよ”
「ほんま、かなんなぁ」
「何か言いました?」
「いや、3人でこの景色見られてよかったなぁ思って」
「そうですね。さすが、三國さんイチオシなだけあります」
あの時、年甲斐もなく泣きそうになった、、、いや泣いてしまったのは誰にも言えない。
「今度は、4人で見に来ましょうね」
目を見開く玄弥に、Aは悪戯っ子のような笑みを浮かべた。
そんな彼女を、玄弥が息子ごと抱きしめたのは言うまでもないであろう。
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シャリファ(プロフ) - 夢主ちゃん、2人目おめでとう‥にしても翔くん可愛すぎ‥ (3月16日 17時) (レス) @page6 id: 8b3e245298 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天ヶ崎音 | 作成日時:2024年1月31日 22時