ある極道のお嬢の話II (ページ2)

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お嬢と天羽組。〜永瀬光一〜ページ2

これはAと戸狩が出会うよりも前、“天羽組の申し子”永瀬光一が天羽京子に拾われてしばらくしてからのこと……

その日、天羽組には殺伐とした雰囲気が漂っていた。

それもそのはず。“天羽組若頭”阿久津敏朗の愛娘であるAが下校時間を過ぎても帰宅していないのだから。

時刻は5時。

普通なら友達と遊んでいると考えるだろうが、彼女を一般と一緒にすることはできない。

何かと狙われやすい彼女は家族を心配させないようにと寄り道せず帰ってくるのだ。

「いいか、お前ら。全勢力を総動員してでも見つけ出せ！」

「はい！」

「親っさん、すみません」

「何を言う、阿久津。あの子は天羽組(うち)の宝だ。これくらいは当たり前だ」

さて、そんな会話が繰り広げられてるのを遠巻きに見ている人物が1人。

数ヶ月前に入った永瀬光一である。

まだ１４の彼は、兄貴たちからそれなりに可愛がられていた。

彼自身、己の成長を感じられていたのだが、それでも唯一苦手なものがあった。

阿久津A。

初対面で言いがかりをつけて泣かれて以降、お互いに気まずい距離感である。

光一が自ら歩み寄ることはないし、Aも泣いた手前どう接するべきかわからないようだ。

(別に、遊んでるだけじゃねぇの)

光一からしてみれば、この時間に帰ってこないからとこんなに騒ぎ立てるのは理解ができない。

この数ヶ月を過ごす中で、近づきはせずとも遠巻きにAを見て、愛される理由というのはわかった。

見た目の可愛さや愛嬌もあるが、極道の家で育ったとは思えないほどの優しさを持っている。

だが、些か過保護ではないかと光一は思うのだ。

「光一、お前も探してくれ。年も近いし、お前の方がわかるかもしれん」

「、、、はい」
(マジかよ、俺が1番わかんねぇっつーの)

親の命を断ることもできず、光一も渋々詮索部隊に参加したのだった。