ある極道のお嬢の話 (ページ7)

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妻が亡くなってしばらく、葬式が終わるとすぐに敏朗は娘を天羽組に連れ帰った。

それまでは妻の苗字だったものを自分のものに変え、正式にAは阿久津敏朗の娘となった。

その時のAはまだ3歳になったばかり。

だが、自分の母親にもう会えないことがわかったのだろう。棺の中でまるで眠っているかのような母に手を伸ばして、大粒の涙を流していた。

「いいか、A。今日からここがお前の家だ」

「……？」

まだよくわかっていないのか、首を傾げる娘に愛おしさを感じながらも阿久津は天羽の屋敷に入る。

すでに組長に挨拶は済ませており、あとは顔合わせのみだ。

昔から、夫婦で交流があったため2人は何の躊躇もなくAを家族の一員とした。

特に子供のいなかった天羽京子は、Aのことを本当の娘のように可愛がった。

Aが寂しくなかったのは、彼女の存在が大きいだろう。

暫くすれば

“けーじおじちゃん”、“きょーこおばちゃん”と舌足らずな声で呼ぶようになった。

それが羨ましかったのか、他の組連中もこぞって名前を呼んでもらおうと奮闘した。

結果

“はじめおじちゃん”と“ひさやおじちゃん”が誕生した。

意外なことに、Aは天羽の強面な組員たちを怖がることはなかった。

それが一層、彼らの庇護欲をかったのかもしれないが。

その数年後、天羽京子が“天羽の申し子”こと永瀬光一を連れてくることになる。