ある極道のお嬢の話 (ページ49)

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お嬢と戸狩の結婚式。兄貴たちが涙を流すページ49

私の名前は阿久津A。

「幸せになれよ、A」

「うん」

新たな人生を歩もうとする極道の娘です。

天羽組への挨拶を済ませた後、光ちゃんがぶっきらぼうに聞いてきました。

「式はあげねぇのか」

「、、、まぁね」

本当なら、私と玄弥さんは結婚する事すら許されなかったはず。

敵同士、まして殺し合った組同士なんだから。

こうやって、挨拶ができただけでも奇跡といえるでしょう。

玄弥さんとも話し合って、そう決めたから……

「チッ……てめぇは、また変なとこで遠慮しやがって。そんなんだから絶妙に反抗期終わんねぇんだよ」

「なっ？！」

怒ったようにガシガシと頭を掻きながら、光ちゃんは大きくため息をついた。

まぁ、確かにあまり強く反抗できないせいで、たまに強い反抗心が出てきてるとは思ってますが……

三十路を過ぎてまで反抗期と言われるのは不服というか、、、

「お前の人生だろ。他人に遠慮してんじゃねぇよ。それによぉ、お前昔からウェディングドレス着たがってたろ」

そう言って雑に置かれた手は、どこか優しくて、胸がジクリと痛みを覚えた。

「あぁ、、、ほんと、光ちゃんには隠し事できないなぁ」

「あ？」

「もう一回、おじさんのとこ行ってくる」

意外にも、おじさん達は二つ返事で了承してくれました。

寧ろ式はいつあげるのかと思っていたとか。

天王寺組の方も、渋る事なく良い返事を頂き2人でびっくりですよ。

それからは本当に大変でした。

式場を決めて、ドレスを選んで、先に呼ぶ人を厳選し、料理も選んで……

目まぐるしい日々はあっという間に過ぎ、とうとう結婚式当日。

「A、幸せになるのよ」

「京子おばさん、圭司おじさん、今日まで私を育ててくれてありがとう。ずっと、大好きです」

ベールを下ろした後、おばさんは優しく抱きしめてくれました。

泣かないようにきゅっと口を結び私も抱きしめ返します。

おばさんは私の手を光ちゃんに手渡しました。

「俺で良かったのかよ」

「光ちゃんが良いんだよ。私のお兄ちゃんでしょ」

「調子のいいこと言いやがって」