ある極道のお嬢の話 (ページ41)

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戸狩玄弥が怒髪天！お嬢が涙を流す。ページ41

私の名前は、阿久津A。

「たぁち！たぁち！」

可愛い息子の我儘に頭を悩ませる極道の娘です。

玄弥さんの舎弟、渋谷大智さんに家まで送り届けてもらったのですが……

「翔、渋谷さんはお仕事に行かないとだから」

「やぁ！たぁちぃ」

この道中で、見事に彼に懐いてしまった翔が離れたくないと泣き出してしまったのです。

自分で言うのもなんですが、翔の泣き顔はすごく可愛いんです。

大きな瞳に大粒の涙をためて、子犬みたいな目で見つめられたら絶対に断れません。

現に、渋谷さんも

「ぐっ、、、」

大打撃を受けてます。

さらに追い打ちをかけるように、翔は短い手足をバタバタとさせて必死に渋谷さんの方に行こうともがいています。

その可愛さといったら、もう、、、

「ふぐぅっ！！」

これは早急に対応しないとまずいですね。

「渋谷さん、とりあえず家に入ってください。私がこの子を着替えさせるのでその間に」

「わ、わかりました」

翔が落ちないように、渋谷さんに抱いてもらい家に入る事に。

翔はようやく要望が叶って嬉しそうに笑っています。

「たぁちぃ」

「かぁわええのぉ」

渋谷さん、溶けてますよ。

「翔、ちゃんとお着替えしてからもう1回抱っこしてもらおう。かっこいい服の方がいいでしょ？」

「ん！」

渋谷さんから翔を受け取り、まだ合図を送る。

渋谷さんはゆっくりと後退り、部屋の奥、ちょうど死角になったところで慎重にドアを閉めてくれました。

幸い翔は着替えに夢中で気づいてません。

良かった。

ここからが大変だけど、仕方ないか。

(ごめんね、翔)

嬉しそうに服に袖を通す息子に心の中で謝りました。

お気に入りの服を終わった翔はウキウキで渋谷さんの元に向かいます。

数秒後、部屋の中には翔の絶叫が響きました。