ある極道のお嬢の話

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お嬢は姐さんに連れられて別室で休むことになった。


京「多分、妊娠初期で情緒が不安定になっているだと思う。今日は休ませたほうがいいわ」





誰も異論を唱える者はいない。




しかし、2人が去った後の部屋の空気は本当に地獄のようだった。








とりあえず、その時の兄貴たちの様子を記しておこう。






敏「お前ら、俺の大事な娘が手ェつけられたんだ……何をするかはわかるよなぁ」




一「１万回刺しても足りないのだ」


清「しっかりと落とし前つけてもらいましょう」


陽「スリル！スリル！今日の星占いは5位！そいつを殺せばハッピー！」


蒼「漆身呑炭。お嬢の恨みは俺がはらそう」


光「コロスコロスコロスコロスコロスコロス」


幸「最大級のグリンぶちかましてお嬢に触れたことを後悔させます」


紫「カシラ、野郎の逸物を刈り取って魚にあげましょう」











なんて、物騒な兄貴たちだと思うだろうが組の宝同然のお嬢を穢されたとあったらこうなるのも当然だ。



かくいう俺も、相手の男をカンナで削ぎ落としたいとは思っている。



桂「よし、お前ら全勢力をあげて相手の男を探し出せ！」







親っさんの声が響いた時だった。






スパン！と勢いよく襖が開いたかと思うと、肩で息をするお嬢の姿があった。





「もう、やめて！」


明らかに怒っている様子のお嬢に、俺らは自然と畳の上に正座をした。






「いい？あの人には何もしないで。悪い人じゃないから。ただ、、、縁がなかっただけ……それだけだから……この子も私の意志で産むって決めたの。だから、何もしないで」





お願い、と頭を下げられてしまっては俺らはどうすることもできない。





親っさんやカシラももう手を出す気はないだろう。




俺はまた、悲しそうに帰っていくお嬢の背中を見つめるしかなかった。

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