ある極道のお嬢の話 (ページ33)

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戸狩玄弥との再会。ページ33

私の名前は阿久津A。

「お願いします、あの人に会わせてください」

私の想いを伝えるために、頭を下げる極道の娘です。

「翔、お顔洗ってご飯にしようね」

私の朝は、可愛い息子を起こすところから始まります。

まだ１歳を過ぎたばかりの息子は、朝は苦手なようですが癇癪を起こすことも少なく、とても助かっています。

「まぁま」

舌ったらずな声が可愛くて、ついつい甘やかしちゃいます。

「ねぇ、翔。今日ね、お母さん頑張るから応援しててね」

おそらく半分も意味をわかっていないだろうに、翔はにっこりと笑いかけてくれました。

「えいえいおー！だよ」

「えっ、えっ、おー！」

勢いよく拳を天に突き上げる翔を抱きしめて、保育園に行く準備を始めます。

圭司おじさんの知り合いが運営している保育園なので、安全面もバッチリ。

何かあれば天羽組に連絡がいくようになってるのでダブルで安心です。

「よし、行こっか」

「あい！」

なんて、こんなにニコニコしてはいるのですが、保育園に着けばそうもいきません。

「翔くん、お母さんにバイバイしようね」

先生にそう言われた途端、翔の大きな目がウルウルと熱を帯び始めました。

私は急いで先生に頭を下げ、駆け足でその場を立ち去らなければなりません。

なぜなら……

「ま゛ぁ゛ま゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」

背後から聞こえる絶叫をなるべく耳に入れないようにし、痛む胸を抑えながらなんとか保育園を後にしました。

いつもなら、もう少し一緒にいるんですけど……

「ごめんね、翔」

今日は、大事な用があるから。