ある極道のお嬢の話 (ページ31)

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No side

話は数ヶ月前まで遡る。

Aは、天羽組の組員を部屋に集めその中心地に座っていた。

そう、Aが帰ってきたあの日のように。

違うところと言えば、Aの腕に息子がいるところと組員の変動くらいだろう。

集められた組員は、訳がわからず困惑している様子だ。

ただ唯一、組長である天羽圭司を除いて。

「皆、忙しいのに時間をとってくれてありがとう。今日は私から話があります。

今から話すことは、きっと納得はできないと思う。

でもこれだけは信じてほしい。私は、ここにいる人達を本当の家族だと思ってる。その気持ちに嘘はない」

Aは一呼吸おいて、深々と頭を下げた。

「どうかお願いします。私とこの子を、玄弥さんのところに行かせてください」

息を呑むもの、下を向くものと反応は様々である。

Aは頭を下げたまま続ける。

「戸狩玄弥は、父を殺した仇です。でも、それと同時にこの子の父親で、私の愛した人です。

大阪で過ごした2年間、私の1番近くで心の支えとなってくれたのは、玄弥さんなんです。

どんな処罰も受け入れます、、、だからどうか、お願いします」

「頭を上げなさい、A」

天羽の声に、Aはゆっくりと頭を上げる。

だがその視線は、自身の膝に向いている。

「戦争は終わった。大事な子らは天王寺に殺されたが、この戦争にお前さんは関係ない。

よって、この場でAの意思を否定する事は誰にもできん」

「でも、、、私は、、、」