ある極道のお嬢の話 (ページ30)

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お嬢の決断。運命が動き出す！ページ30

sideA

長い、長い戦争から1年が経ちました。

精神的な疲労に軽い栄養失調が重なり、私は数ヶ月入院した後、天羽組へと帰されました。

その時には戦争は終わっていて、天王寺組若頭が自決を図ったことを聞かされました。

私が入院していたところには、あの人も……

玄弥さんもいたそうですが、私は、、、

会うことはできなかった。

両手で抱えられるくらいになって帰ってきたお父さん。

お父さんを殺したことが、許せなくて憎くて仕方ない。

そう、そのはずなのに、どうしてか胸が苦しい。

頭の中で、あの人を殺そうとするたびに、身体が軋むように痛んで涙が溢れてくる。

白い無機質な部屋で幾度となくそれを繰り返し、私は理解した。

「どうして、嫌いにさせてくれないの……玄弥さん」

父を殺し天羽組を滅茶苦茶にした憎しみと同じくらい、私はあの人を愛しているのだと。

おかしいと思う。

狂っていると思う。

普通なら、大切な人を殺した奴を許せるわけがない。

それは先生の事件で理解している。

でももし、大切な人を殺したのが同じくらい大切な人だったら？

どう転んだって、天変地異が起きたって、私が阿久津敏朗の子であることは変わらなくて、父を殺したのが玄弥さんであることも変わらない。

もしもあの日に戻れたら、私は玄弥さんを好きにならないだろうか。

「ふふ、、、なんて、わかりきった答えよねぇ」

そのために、ここに戻ってきたんだから。