カシラの死とお嬢の告白 ページ27
No side
「翔、おじいちゃん達もう少しで帰ってくるからね」
阿久津Aはベビーベッドに眠る我が子に優しく語りかけた。
熾烈を極める羽王戦争の最中だが、組内は嘘のように静かだ。
Aは手元の編み物を進めながら、想いを馳せる。
この戦争で多くの組員が重傷を負い、亡くなった者も多くいる。
一般人のAからすれば、すぐにでも辞めて欲しいところではあるのだが……
「翔、皆には言わなかったけどね、あなたの名前には人と人を繋ぐ架け橋になって欲しいって意味もあるのよ」
ぼんやりとした思い出せない母の残した唯一のものは、この編み物だった。
母の手書きのノートを見ながらAは編み物のイロハを学び、気を紛らわせるときに使っている。
今もちょうど、父である敏朗のマフラーを編み終わったところだ。
そのとき、部屋の外が騒がしくなり始めた。
戦争が激化してる故、安易に部屋から出ることは叶わない。
「何か、あったのかしら」
胸を燻る嫌な予感をAは必死に拭う。
「だぁう」
我が子の声にハッと気づき、Aは息子の元による。
「おはよう、寝坊助さん。お母さんを心配してくれたの?」
腕の中でコロコロと笑う息子を見ていると、先ほどの不安も幾分か薄くなったように感じる。
それからどれくらいの時間が経っただろうか。
Aは玄関の音に目を覚ました。
どうやら、眠っていたようだ。
息子もベビーベッドですやすやと寝息を立てている。
「お父さん達、帰ってきたかしら」
Aはまだ寝ぼけたままの目を擦りながら、部屋の扉を開けた。
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シャリファ(プロフ) - 夢主死なないで…!! (1月21日 21時) (レス) @page46 id: d94d66ff3c (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ついに再開するのかな……どうなるのか、楽しみ! (1月3日 22時) (レス) id: 8bbd6a886b (このIDを非表示/違反報告)
シャリファ(プロフ) - まじで相手誰だ‥?これからも楽しみにしてます! (11月29日 21時) (レス) @page18 id: 8b3e245298 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天ヶ崎音 | 作成日時:2023年11月24日 18時