ある極道のお嬢の話 (ページ20)

今日:51 hit、昨日:10 hit、合計:21,710 hit

・ページ20

病院に着くとすぐに、お嬢のいる個室に案内された。

カシラを先頭に続々と室内に入っていく。

ベッドの上には、赤ん坊を抱いて微笑むお嬢の姿。

女神や聖母と形容されても納得できるほどの姿がそこにあった。

「お父さん」

カシラがフラフラとお嬢に近づき、その場に座り込む。

ゆっくりとお嬢の手を取ると、涙を流した。

敏「よく、頑張ったなあ。さすが俺たちの子だ」

お嬢は一瞬、驚いたような顔を見せたが次第にその瞳に涙が滲み始める。

出産とは時に死を伴う危険なものである。

医療が発達したとは言え、その可能性はゼロではない。

お嬢と坊ちゃんの頑張りを思うと、涙を禁じえない。

桂「A、京子と組に残ってる奴らにもその子を見せて良いか？」

「うん、もちろん」

親っさんの指示を受け、撮影用の器具を設置していく。

あまりにも本格的な機械たちにお嬢は目を丸くしていたが、納得して欲しい。

俺たち舎弟にとって、ミス即ち死である。撮影一つとっても失敗は許されない。

紫「こっちはオッケーだ」

華「では、今から繋ぎますね」

「ふふ、何だか恥ずかしいわ」

しばらくすると、姐さんと組にそれぞれ繋がった。

京『小峠、もう少し近くで見れる？』

華「はい、少しお待ちください」

俺はカメラを持ってお嬢に近づいた。

華「お嬢、坊ちゃん、失礼します」

眠っている坊ちゃんを起こさないように慎重に近づく。

坊ちゃんを泣かせれば十中八九俺は死ぬ。

京子『まぁ、可愛い子ねぇ。きっと男前になるわよ』

「よかったねぇ、翔(かける)。京子おばさんのお墨付きだよ」

光「もう名前つけたのか？」

「うん、ずっと考えてたんだけどね。自分の意思で飛んでいけるような子になってほしくて、、、」

光「ふぅん、まぁいいんじゃねぇの？」