ある極道のお嬢の話 (ページ16)

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さようなら、清志おじさんページ16

私の名前は、阿久津A。

大好きな家族の葬式に参加する、極道の娘です。

今、天羽組は関西極道の天王寺組と熾烈な争いを繰り広げています。

沢山の家族が連日大怪我を負う中、とうとう1人目の犠牲者が出てしまいました。

天羽組の生きる伝説と呼ばれた“工藤清志”

華太と速水を逃がすため、1人で戦い最後は立ち往生だったとか。

華太は大怪我を負い、まだ目が覚めていません。

「A」

お父さんの声にハッと気がつきました。

そう、まだおじさんのお葬式の最中だった。

何だか、現実だと思えなくて、夢の中にいるみたい。

「おじさん」

棺の中のおじさんは眠っているみたいに静かで、やっぱり死んだなんて嘘みたい。

花の中から埋もれたおじさんの手を見つけて、そっと触れる。

たくさん褒めてくれたおじさんの手は、とても冷たくて、もう死んでいるのだと冷酷に告げてくる。

「おじさん、清志おじさん、、、起きてよ」

また笑ってよ、優しい声で名前を呼んでよ。

たくさん褒めて、たくさん叱ってよ。

「おじさん、あの時止めてくれてありがとう。先生との約束、破らせないでくれてありがとう。

いっぱい迷惑かけて、ごめんなさい。何回も助けてくれてありがとう。

ねぇ、おじさん、、、寂しいよ……」

もう優しかったおじさんはいません。

どうして、あの日感謝を伝えなかったのでしょう。

いいえ、いつでもその機会はあったんです。

今日に至るまでに、何回でも伝える機会はあったのです。

何度悔やもうと、何回謝罪しようと、おじさんが目を覚ますことはありません。

優しい声で、大きな手で、私を褒めることも叱ることもありません。

温かい目で、大好きな笑顔で、私を見てくれることはありません。

「ごめんなさい、さようなら」