ある極道のお嬢の話 (ページ13)

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復讐の火蓋は切って落とされた。お嬢、涙の怒りページ13

その日の夜、私は組の武器庫に来ていた。

本来は入るのを禁止されているから、多分バレたら怒られる。

けど、もうそんなことどうでもいい。

ホームレスのおじさん達の話が正しければ、今日か明日には先生を殺したやつらが来る。

それを逃せば、次はいつになるかわからない。

やるしかない。

たとえ組のみんなと会えなくなっても……

私は、月明かりに反射してキラリと光るナイフを見つめた。

動物でも人でも切れてしまいそう。

「先生、仇を取るから。見ててね」

フードを深く被り、ポッケの中にナイフを入れる。

いつでも取り出せるように、片手はポッケの中。

刺す角度は45度、お腹を割いたらしばらくは苦しんでから死ぬはず。

私は、昔光ちゃんがおじさん達に教えられていたことを反復する。

目的地まであと数100メートルのところまで来た時だった。

目の前に、嫌な空気を感じた。

直接心臓を撫でられるような、そんな感じ。

橋の下、夜なのもあってその方向に何があるのか確認できない。

身体中から嫌な汗が吹き出て、呼吸が浅くなる。

ポッケに入れたナイフをギュッと握った。

「誰」

その何かが、ゆっくりと動きはじめた。

私は少しずつ後退りながら、ナイフを抜く準備をする。

だんだんとソレの形がはっきりしてきた。

「なっ？！」

月明かりに照らされた顔を見て、私は思わず目を見開いた。

「清志おじさん、、、どうして」

そう、そこにいたのは工藤清志。

いるはずのない天羽組の組員。

どこからバレたのか、どうしてここにいるのか、この後どうしようか……

さっきよりも確実に、汗が吹き出てきた。

清志おじさんは一歩一歩近づいてくるけど、私の足は動かない。

「やっぱり、ここにいたか」