【歌い手】期待して損した。［２］

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ふと視線を机の上に移すと、このシェアハウスのメンバー全員での集合写真が目に入った。

吸い込まれるように、その思い出の写真に釘付けになる。

懐かしいな、なんて思いながらその写真に手を伸ばして手に取ってみると、途端に頬から雫が伝っていき、写真にシミを作っていった。あれ、なんで……



『っ……なんで、涙……なんで、止まってくれないの……？』



そう呟くも、溢れて止まらなくなった涙はポタポタと流れて写真を濡らしていく。

その溢れた一粒が、恥ずかしがりながらも笑顔を浮かべている写真の中の私にダイレクトに落ちてしまい、誰が写っているのか分からなくなる程に滲んでしまった。

……いや、でも、この方がでもいいのかもしれない。

この方が思い出を少しでも濁らせられるから、もう泣かずに済むかもしれないから。



"明日の5時、拡散してほしいことがあります"



その文字を打ち込んでから息を吐いた。

Twitterでこのツイートを公開すれば、もう私は後戻りできないのだから。

再び深く息を吐く。震える指で慎重にツイートを送信すればすぐに反応が来て、シェアハウスのメンバーも拡散を手伝ってくれたようでTLには私のRTされたツイートが流れているのが見えた。

今までにないくらいRTされて、その短い文章がどんどんと広まっていく。

皆のリスナーさんも私のリスナーさんもかなり戸惑っているようだけれど、これぐらいがちょうどいい。その方が良いんだ。

……いや、でも本当は意なんて決していないから、本当はどうしようもないくらい怖い……けれど、それでもダメだ。



『逃げるな、私……！』

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