８-4 ページ25
道中も手は繋がれたままだった。
不思議に思いつつも、特に支障はないしまあいいかとそのまま歩く。
段々眠くなってきてしまい、少し力が抜けて引っ張られる形になる。と、財前がこちらを振り返った。
「もしかして眠いんすか？」
「…あごめん」
「いや全然いいですけど」
「…寝やんようになんか話してほしい」
「無茶ぶりすね…」
「どんなでもいいから…」
無茶を言っているのはわかっているが尚も食い下がると、財前は少し考えた後携帯を取り出した。
「…甥っ子がいるんですけど、」
写真も見せつつ話してくれる財前はとても嬉しそうで、甥っ子くんもとても可愛くてお店につくまで話は弾んだ。いつの間にか眠気もどこかへ飛んでいったようだ。
＊
「あー楽しかった！」
自宅への道を歩きながら、片手で伸びをする。
割とガッツリ晩御飯を食べながら、沢山話しをした。
お笑いの話だったり先生の話だったり、たまにテニスの話、合間合間に誰かがボケて誰かが突っ込んで、ここ最近で1番笑ったと思う。
「謙也さんがあれ飲んだ時1番笑ってましたね」
私と一氏が共同で作ったブレンドドリンクをコーラと偽り謙也に渡した。
それを飲んだ謙也はすごい顔をしたかと思うと、そのまま向かいにいた小石川に吹き出した。もう死ぬかと思うくらい笑った。2人にはお詫びに私イチオシのプリンを奢った。一氏からは後日それぞれの好物が贈られるらしい。
「財前も笑ってたやん」
「謙也さんすごい顔してましたもん、あれはあかん」
思い出し、2人で笑い合う。
・
私は今、財前と2人で夜道を歩いている。
駅前のファミレスだったので電車組とはその場で別れた。
私は学校に程近い所に住んでおり帰るには来た道を戻らなきゃいけないので、それじゃあと帰ろうとしたら財前が「送ります」と言ってくれた。もちろん遠慮したけれど、みんなに「送ってもらい」と促されたのでお言葉に甘えた次第だ。
そして何故か、行きと同じく手は繋がれている。
寒い訳では無い。もうすぐ夏だし後少しすれば上着も必要なくなる。
早いなあと思うと共に、まだ出会って2ヶ月かそこらしか経ってないんだなあとも思う。
そんな事を考えながら、ふと口を開いた。
「ずっと手繋いでるな〜」
繋がれた手が一瞬固まり、握られる力が先程より少し緩くなる。
「…いやでした？」
「んー、手汗は心配やけど嫌ではないかな」
「そっすか」
笑いながらそう返すと、素っ気ない返事とは裏腹にきゅ、と手を握り直された。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 150人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
におー - 更新楽しみに待ってます！ (2020年8月6日 7時) (
レス) id: 804a9814c8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめこ(プロフ) - ここの財前くんすごい可愛くて好きです…。いつも楽しく読ませてもらってます。 (2019年10月21日 1時) (レス) id: a01c44eded (このIDを非表示/違反報告)
ふじりんご(プロフ) - あっっ こういう系好き… (2019年9月12日 20時) (レス) id: 42d7d11660 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 私は関西人です嬉しいです (2019年9月4日 13時) (レス) id: 84f3235ae9 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - テニラビやってますやられてますか？私はみかんですねんという名前でやってますよかったら申請お願いします！あと更新頑張ってください私も光くん好きです (2019年9月4日 11時) (レス) id: 84f3235ae9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さゆ | 作成日時：2019年3月19日 8時
