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「ふあ〜あ……ねむい………」
朝。予鈴がなっている中、昇降口へと続く廊下をふらふらと歩きながら自分の髪を結ぶ。
眠くて上手く纏まらずぐしゃぐしゃになる、というのをもう3度は繰り返している。眠気も消えてくれない。もうこのまま行こうかな、と瞼をこすりながら歩いていると背後から最近よく聞く声が聞こえた。
「なにしてるんすか」
「…あ、財前くんや〜」
振り返ると、訝しげな顔をした財前くんがこちらを見ていた。
「めちゃくちゃ眠そうすね」
「んん、そう、ねむい…。今から体育なんやけどな、さっき着いたから、もう教室誰もおらんかってん。やから、着替えて、さっき、んで今、外、向かってるとこ…」
「ふ、なんやその喋り方。髪もぼさぼさやないすか」
「ん、なんか寝起きで上手くできん…でもな、遅刻じゃないんよ」
「本鈴あと5分すよ」
なんか今、財前くんが笑ってるような気がする。あまり目が開かず、うっすらとしか見えなかった。
「…俺がやったげてもええですけど」
「んー…」
ん?今なんか…
「…んえ!?ぜひ!」
「うるさ…」
思わぬ提案に、つい大きな声を出してしまった。
気が変わらぬ内にとそのまま後ろに向き直り、お願いしますと言えば「…失礼します」という声が聞こえてきた。なんの挨拶だろうか。
ぼさぼさに結んであった髪ゴムを取られ、髪が解かれた。
そのまま数秒ほど動きがなく、不思議に思い口を開く。
と、声を発するより先に、財前くんの手が髪に触れた。まさに恐る恐る、と言った様にゆっくり髪をまとめられる。
なんだか少し擽ったい。ふふ、と笑うと「揺れんな」と怒られてしまった。その声は真剣だ。
言われた通り目を瞑ってじっとしていると、なんだか緊張してきた。財前くんが触る髪一本一本に神経が通ったみたいに指の動きがわかってしまう。触れ方で、とても気を遣ってくれているのが伝わってきて、頭に熱が集まってくる。
…めちゃくちゃ熱くなってきた。財前くんに気付かれないか気が気じゃない。
汗臭くないかな、と今更な心配をし始めたその時、財前くんの手が離れた。
「あっ、ありがとう!」
慌てて振り返り、お礼を言うが財前くんの表情は暗かった。
「…いや、やっぱ外しましょ。自分でやった方がええですよ」
「なんで!?」
手鏡を出し、確認する。
「ほら、解いたりますから後ろ向いてください」
…先程自分で結んだ時とあまり変わらない、というかもしかしたらそれより酷いかもしれない。
でも。
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におー - 更新楽しみに待ってます! (2020年8月6日 7時) (レス) id: 804a9814c8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめこ(プロフ) - ここの財前くんすごい可愛くて好きです…。いつも楽しく読ませてもらってます。 (2019年10月21日 1時) (レス) id: a01c44eded (このIDを非表示/違反報告)
ふじりんご(プロフ) - あっっ こういう系好き… (2019年9月12日 20時) (レス) id: 42d7d11660 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 私は関西人です嬉しいです (2019年9月4日 13時) (レス) id: 84f3235ae9 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - テニラビやってますやられてますか?私はみかんですねんという名前でやってますよかったら申請お願いします!あと更新頑張ってください私も光くん好きです (2019年9月4日 11時) (レス) id: 84f3235ae9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さゆ | 作成日時:2019年3月19日 8時