リドル先輩に男装バレしてしまった監督生の話。【リドル･ローズハート】 (ページ13)

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12話ページ13

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Aが対局を放って部室から出ていった後、仕切り直したアズールとイデアは、2人で将棋を打っていた

「それにしても、監督生氏の思い切りの良さはすごいですな。弱みを握るために相手をつけ回すなんて…」

「まあ、そこが彼の美徳というか、単純なところもある意味で言えば可愛いじゃありませんか」

「おっ、アズール氏のデレいただきましたわ～～
なんだかんだ言って絆されてますな、アズール氏も」

ボソボソと呟くように話すイデアも、たいして人のことを言えないだろうに、とアズールは思った。

たしかにオンボロ寮の監督生のことは嫌いではない、むしろ僕がオーバーブロットした件の日からも変わらず接してくれる気立ての良さには好感すら抱いている。……が、それとこれとは別の話だ。僕は断じて絆されてなどいない。断じて

「はぁ？この僕がなんの魔力も持たない人間風情に絆されるなんてことあるわけないじゃないですか。親しくするメリットも無し。まあ、強いていえばボードゲームの対局相手くらいにはなりますか、」

「ツンデレ…」

「何か言いました？」

ポロリとイデアの口から出た言葉は、どうやら巷で流行っているゲームやらアニメやらの専門用語…？らしい。深く意味を知っているわけではないものの、何だか自分に向けて言われていると思うと腹が立つ。

じろりと睨みをきかせて威圧すれば、異端の天才とまで言われているのにやけに小心者な1つ年上の先輩は、すぐに「ひえっ」と声をあげて萎縮し始めた。

(あの嘆きの島のシュラウド家の跡取りとあろう者が、随分と気の小さいことで……全く、監督生さんといいイデアさんといい、僕には理解できませんね)

幼い頃の僕は、確かにグズでノロマな劣等生であった、それ故に引け目を感じて反抗することもままならなかったが、もし僕がイデアさんのように生まれつきものすごい才能を持っていたら…

(いや、この思考は僕の人生に不要だ。)

僕は僕だけの力で、血のにじむような、なんて言葉では言い表せないような努力だけでここまでのし上がってきた。その揺るがない事実の前では生まれも才能も意味をなさない。

そう。今の僕は「持てる者」だ。

だから才能もなく努力もできない凡人に慈悲の心でもってして、分け与えてあげている。

あの監督生のことが妙に気になるのは、彼が正しく僕が救済してあげるべき「持たざる者」の代表のような存在だからだろう。

(そう…)

きっと、それ以上でも、以下でもない。