その26 ページ26
「急がないと、彼女がどうなってしまうか...」
眉間に皺を寄せる一期。
目立たないよう刀を隠して花街を歩いていると、乱が歩く足を止める。
「…ここだよ、忍びさんが連れて行かれた遊郭。」
「なぜわかるんだい?」
「いま、見えたの。忍びさんと一緒に街へ出かけたときに…見た、男が。」
怒りで肩を震わせる乱を見て、堀川は言う。
「すぐにでも見つけ出して、はやく本丸に帰ろう」
.
短刀からすれば、遊郭へ忍び込むのは容易なことであった。
「五虎退、そっちはどうだった?」
「だめです…忍びさんに似ている人はいなかったです」
そう言いながら首を横に振る五虎退。
「ここまで探してもいないってことは、たぶん上の階にいるのかもね。
行くよ、五虎退」
「はい」
.
「遊郭ねぇ…。逃げ出そうと思えばアイツ一人でできそうにも思えるがな」
建物と建物の間の狭い路地で、和泉守と一期は待機していた。
「どうでしょうか…彼女は時によっては慎重に行動するでしょうし、忍びですから..何をしだすか予想できません」
「…何が言いたい」
「自分に有益なことがあれば、どんな危険も省みないということですよ。
例えば…そうですね、任務に関する情報を知っている者と偶然会ってしまったら…?」
「ま、喜んでそっちのほうに食らいついて…おい、まさか」
「乱達が入っていった遊郭はこの花街の中でもおそらく上のほうに格付けされているでしょう。
そんなところに行けるのは、限られた客のみです。忍びが狙う対象が現れることだって、珍しいことではありません。」
「…っあぁ、鶴丸国永がここにいなくて良かった」
「なぜです?」
「今の話を聞いたら、刀振り回して何人でも殺してあの娘を取り返しに行くだろうよ」
深いため息をつきながら、和泉守はグッと拳を握りしめた。
.
一方その頃、堀川と浦島も同時に同じ建物に潜入していた。
一つ一つ部屋を確認していく。
「お…、オレ、遊郭くるの初めてなんだけど…もう来なくていいかも…」
「僕も…」
男女の生々しい混じり合いを間近で覗き見するなど、誰が好き好んでやるだろうか
やれやれと肩を落とした瞬間、
「今、忍びさんの声がしなかった?」
そう耳打ちをする浦島。
同じことを思ったのか、堀川も頷く。
声がしたのは、一つ先の部屋
「一度様子を確認しよう」
そう言って堀川は障子を少し開ける。
___細い隙間から見えた光景に、堀川は絶句した。
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作者名:にわ | 作成日時:2020年2月7日 19時