181話 懐かしさと罪悪感 ページ37
─メタトンside─
カタツムリを放牧した、二つ並んだ家に着くと、ボクは、途端に懐かしさを感じた。
ブルッちの家も、かつてボクが住んでいた隣のピンク色の家も、昔と何も変わっていない。
それと同時に、胸が締め付けられる思いだった。
平静を装うため、ボクは、いつも通りのハイテンションな調子で、努めて明るく振る舞う。
「とっても愛らしいお家だね!」
「へへ…いらっしゃい。なんにもないケド…ゆっくりしていってネ。」
はにかみながら、そう言ったブルっちは、ヘッドフォンを頭に付ける。
ふと、部屋の隅に、CDが無造作に置かれてあるのを見て、懐かしさと胸のざわめきを感じた。
あのミックスCDは、きっとブルッちが作ったものだろう。
彼は曲を作ることが大好きで、作曲のセンスもとってもいいんだ。
ブルッちの許可を得て、曲を聴かせてもらうと、素敵な曲が流れた。
「Oh…!素晴らしい曲だね。キミは、音楽の才能があるよ!」
「うん、私もこの曲好きだなぁ…!ずっと聞いていたいくらい!」
「ア…アリガトウ…。」
ボクとAちゃんの感想で、ブルっちは、嬉しそうにはにかんだ。
「ボク、DJのお仕事するのが、夢なんダ…。それで、いつか…いとこと共演できたらなっテ…。」
ブルッちのその言葉を聞いた時、ボクの心は、罪悪感でいっぱいになった。
ボクも、ブルッちと同じ気持ちだった。
また昔みたいに、彼と一緒に音楽をやりたい。
でも…やっぱり、ブルッちを置いていったボクに、そんな資格はない──そう思った。
それを悟られないよう、笑顔で、彼にエールを送る言葉をかける。
「素敵な夢じゃないか!応援しているよ!ナプスタブルーク君。ボクの歌でね!」
「私も応援してる!夢、叶うといいね!」
何も知らないAちゃんも、ブルッちの手を握り、ニコニコと彼にエールを送った。
心からの笑顔で、そう言っているのが伝わる。
そんな彼女が、今のボクには、ちょっと羨ましく、そして眩しく感じた。
「へへ…アリガトウ。あ…この話は、いとこにはナイショにしてネ。」
「あ…ああ!もっちろんだよ!」
ボクは、ちゃんと、笑えているだろうか?
明るく、そう返せているだろうか?
正直、それは分からないけど、今は取り繕うしかない。
ごめんね、ブルッち。
その"いとこ"は、今、キミの目の前にいるんだ…。
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のん猫??(プロフ) - 雪水うさぎもちさん» 雪水うさぎもちさん、コメントありがとうございます!アンテの中で一番好きと言っていただけて嬉しいです…!とても励みになりました!不定期ではありますが、これからも更新頑張っていきたいと思います! (2022年12月3日 14時) (レス) id: 24741bde4e (このIDを非表示/違反報告)
雪水うさぎもち(プロフ) - アンテの夢小説でいちばんこれが好きだから! (2022年12月3日 14時) (レス) id: 75fc25324b (このIDを非表示/違反報告)
雪水うさぎもち(プロフ) - (;_;)更新待ってるからいつでも (2022年12月3日 14時) (レス) id: 75fc25324b (このIDを非表示/違反報告)
のん猫??(プロフ) - なちこさん» なちこさん、ありがとうございます!そうだったのですね!それは光栄の極みです…!大幅に修正することに決めましたが、変えないところはそのままにしたり、ギャグシーンは残します!コメント励みになりました!頑張ります! (2021年9月6日 17時) (レス) id: 0f66d036df (このIDを非表示/違反報告)
なちこ(プロフ) - 初めてコメントします。アンテにハマって、最初に読んだ夢小説がこちらのお話でした。テンポよくギャグテイストで進められる物語に夢中になって読んでしまいました!大幅修正とのことでしばらく読めなくなるのは残念ですが、再開楽しみにしております!応援してます (2021年9月6日 15時) (レス) id: d3058cd882 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のん猫?? | 作成日時:2021年8月15日 22時