地下世界に迷い込んだ少女【第4章】

173話 彼女の一言 ページ29

─メタトンside─

「オレは、マネキンに取り憑いている"亡霊"だ。オレのいとこも、かつてマネキンに取り憑いていた。そう…そこのツインテール！貴様が現れるまではな！」

はぁ…厄介なことになったな。

ボクは思わず、心の中で、ため息をついた。
まさか、ここで"マネキンになったいとこ"に遭遇する事になるなんてね…。

こいつは、昔、"肉体を探し求める旅に出たい"と言って、一番最初に家を出ていったボクのいとこだ。

怒りっぽくて、好戦的で凶暴で、ボクやもう一人のいとこも、よく振り回されていた。
もちろん、根は悪いヤツではないんだけど…。

可哀想に、Aちゃんはいきなりいとこ…マネキン君に絡まれ、困惑する羽目になった。
…彼女には、心底同情するよ。

マネキン君は、いとこのダミーを怖がらせたとかなんとか言っているけど、これも恐らくAちゃんに因縁を付けているだけだろう…とボクは思う。

「恐ろしいことって…ルナ、ダミーに何を言ってしまったのだ？」

「ま、どうせ大したことないだろ。」

「そ、そのはずだよ！ちょっと待ってね…!今思い出すから！」

パピルス君とサンズ君に、そう言われながら、Aちゃんは慌ててそう言った。

「よし、1秒だけ待ってやる！」

「みじかっ！せめて15秒くださいよー！」

「なんだと…!？まったく仕方のないヤツめ…！！」

マネキン君とAちゃんが、コントのようなやりとりを交わした後、Aちゃんは顎に片手を当て、考えるポーズを取りながら唸る。
そして…合点がいったという顔をして、手をポンと叩いた。

「分かった！思い出した！"ダミーちゃん、めちゃくちゃプリティーだね！？可愛いすぎて鼻血ブーだよ！"」


Aちゃんの一言で、「そう…!それだ！その言葉だ!」と、マネキン君は強く頷いた。

「貴様のその言葉で…いとこはあまりの恐怖に、マネキンを捨てて逃げ出した…！」

ボクは、マネキン君の言ってることが理解できなかった。
それって…怖がらせる言葉なのかい…？

彼は怒りで体を震わせているけど、ボクには彼女の一言は、恐怖だとは思えない。

確かに最後の一言はアレだけどさ…むしろ褒め言葉じゃないのかい…？
ボクなら、そう解釈するけどな。

「そ、そんなに逃げ出しちゃうほど、キモかったのか…私…。」

彼女は、少し俯いて額に手を当て、"あちゃー、やってしまったかー"と言う表情をしていたけど、そこまで落ち込むことじゃないと思う。

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