漆拾壱.「親の愛」 ページ25
***
俺は体が生まれつき弱かった。
走ったこともなかった。歩くことさえ、苦しかった。
…無惨様が、現れるまでは。
両親は、喜ばなかった。
強い体を手に入れた俺は、陽の光に当たれず…人を、食わねばならないから。
昔、素晴らしい話を聞いた。
川で溺れた我が子を助けるために、死んだ親がいたそうだ。
俺は感動した。なんという親の愛…そして絆。
川で死んだその親は、見事に親の役目を果たしたのだ。
…それなのに、何故か俺の親は…俺を、殺そうとした。
母は泣くばかりで、殺されそうな俺を庇ってもくれない。
偽物だったのだろう。俺達の絆は、本物じゃなかった。
「ご、めん…ね…」
何か言ってる。まだ生きているのか。
「じょう…ぶな、体に産んであげられなくて……ごめん、ね…」
虫の息ほどに掠れた、小さな声で母はそう言った。
その言葉を最期に、母は事切れた。
死んだ。
「大丈夫だ、累……一緒に死んでやるから……」
殺されそうになった怒りで、理解出来なかった言葉だったが、父は、俺が人を殺した罪を共に背負って…死のうとしていたのだと。
その瞬間、唐突に理解した。
本物の絆を、俺はあの夜、俺自身の手で切ってしまった。
それでも…無惨様は、俺を励まして下さった。
「全てはお前を受け入れなかった親が悪いのだ。
己の強さを誇れ。」
そう思うより他、どうしようもなかった。
自分がしてしまったことに耐えられなくて。
たとえ自分が悪いのだと分かっていても。
毎日毎日、父と母が恋しくて堪らなかった。
偽りの家族を作っても…虚しさが止まない。
結局1番俺が強いから、誰も俺を守れない。
庇えない。強くなればなるほど…人間の頃の記憶も消えていく。
自分が何をしたいのか、分からなくなっていく。
…どうやってももう手に入らない絆を求めて、必死で手を伸ばしてみようか?
届きもしないのに。
***
私は小さな体から、抱えきれなくなるほど…大きな悲しみの空気の味を吸った。
それは炭治郎も匂いで気がついたのか、鬼の背中に手を置いた。
そして私は……鬼の転がっている頭を撫でてしまった。
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ひかり(プロフ) - craneberry1223さん» すいません!直しておきました! (2019年10月19日 11時) (レス) id: c753592d54 (このIDを非表示/違反報告)
craneberry1223(プロフ) - 伊之助と村田のセリフ直してください。全部、伊之助になってます (2019年10月19日 10時) (レス) id: 1013b94a43 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 桜さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年9月29日 1時) (レス) id: c753592d54 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 続きが楽しみです!頑張ってください! (2019年9月29日 1時) (レス) id: 193d98d6bf (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - 吹雪咲彩さん» ふぶちゃーん!!ほんと?!ありがとう(*^^*) (2019年9月28日 12時) (レス) id: c753592d54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひかり | 作成日時:2019年9月23日 15時