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夜久が病院へ行くからついてきた。
正直に言うと、心配だった。
夜久は人にあまり頼らない性格で弱みなんて滅多に見せない。
そしてバレーをものすごく愛しているから、怪我のことをあまり報告しないだろうと踏んだのだ。
もし怪我が酷いものだったら、夜久は1人で抱え込んでしまう。
「大丈夫」だとみんなに隠しながら1人で怪我の辛さに立ち向かう姿を見るのが嫌だったからなのかもしれない。
………この選択は正解だった。
夜久もおそらく私がついてきた理由を分かっていたとは思う。
大事に至らなくて良かった。本当に。
『骨は丈夫なんだね』
「牛乳は飲んでっからな」
『あはは、納得!』
夜久は恥ずかしそうに下を向いた。
「…………えーーーっとさ」
『ん?』
「–––ありがとな、付いてきてくれて」
『あ、…うん』
「試合のときも、凡が言ってくれた言葉で助かったし。ほんっと感謝してる」
違う、違う、違う。
綺麗な理由じゃなかった。
私が夜久に怒ったのは、ただの私の都合なだけ。
『………違うの』
歩いていた足を止め、私は下を向いた。
『–––––––自分のために言ったの!』
「え?」
『………怪我をしてこれが高校最後の試合になるなんて嫌だった。
いや、こうじゃなくて、えっと、
まだ私、夜久と一緒に部活していたかった!
………じゃなくて、
夜久と離れるのが嫌だったの、これでもう関わるのが少なくなって話さなくなるとかが嫌で、
だってさ、私、夜久がさ、』
ボロボロと目から涙が止まらなくなった。
もう夜久にはバレたのだと直感で悟り恥ずかしくなる。
でも募る想いは止められない。
『夜久が…っ………す、』
「好きだよ、凡」
今、なんて?
止まらなかった涙がピタリと止まり、私は夜久の目を見た。
夜久は私をぎゅっと抱きしめた。
夜久の匂いと、試合の後だからか少し汗の匂いが混ざってどこか安心した。
『や、く?』
「好きだ。俺、凡が好きなんだ」
『………っ……うん、私もぉ…!』
ずっと好きだった人と、想いが通じ合うのはどんなに幸せなことか。
ああ、ものすごく好きだ。
『春高、優勝してよね』
「勿論」
もう一つの話
fin
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池田(プロフ) - ハクさん» お忙しい中読んでくださりありがとうございます!!!いつもいつもコメントしてくれて本当に嬉しいです……! (2020年8月20日 7時) (レス) id: 7362264056 (このIDを非表示/違反報告)
ハク(プロフ) - 最近忙しくて池田さんのお話を読めてなかったのですが、やっと追いつきました〜!今回も最高で素敵です…!!きゅんきゅんしっぱなしでした/// (2020年8月20日 6時) (レス) id: 63b947b75a (このIDを非表示/違反報告)
池田(プロフ) - さゆさん» こっちのセリフです!(笑)ありがとうございます頑張れます〜! (2020年8月16日 11時) (レス) id: 7362264056 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ(プロフ) - 池田さん» 嬉しいと言ってくれるなんてもったいない言葉です…!頑張ってください!! (2020年8月16日 8時) (レス) id: d211bb56f4 (このIDを非表示/違反報告)
池田(プロフ) - さゆさん» さゆさんまたまたコメントありがとうございます!!本当に嬉しいです!これからも頑張ります〜〜!! (2020年8月15日 23時) (レス) id: 7362264056 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:池田 | 作成日時:2020年8月12日 20時