secret1【難関Talk】 ページ2
……………失敗したわ!また会話が続かない……!
とにかくなにか話さなきゃ。
「本日はどのようなご用件でいらしたのですか?」
すると、まさか話しかけられるとは思っていなかったのか困った表情を顔に浮かべた。しかしそれも一瞬の出来事。切り替えの早い彼はすぐに真顔に戻り、
「フェリーさんのお父様から、お召し物のご依頼を承りまして。それで寸法合わせに参りました」
とかなんとか言っているが、実際はお父様があたしと彼を引き合わせるために仕組んだことだろう。
ていうか、急に愛称で呼ばれるのは気が引ける。この人は加減というものを知らないのだろうか?
「お茶をお持ち致しました」
グッドタイミングよメアリス!!こちとら会話がまともに続かなくって困っていたの!と視線で合図を送る。
「ちなみに、お嬢様のお父様はグレーをあまり好みませんので、紺色がよろしいかと。それから、愛称は家族間での親交を象徴するものですので下の名前でお呼びするのがよろしいかと」
「あっ……」
上手く会話を繋げてくれると思ったのに。メアリスに期待したのが悪かったわね。そういえば、この子は口下手なんだっけ。
「……すみません、ラフェルリリアさん」
「いいえそんな!大丈夫です」
……って、なんで愛称で呼ばれてたのを知ってるのよ!?メアリスはお茶をつぎにいったんじゃなかったの!?はぁ、きっと聞き耳を立てていたに違いない。
そんなこんなで何とか他愛もない話を紡いでいると、やっと今回の黒幕、お父様が家に帰ってきた。
立ち上がって挨拶をする。
「おかえりなさい、お父様」
「おぉ、ただいま。すまないねドゥーチェ君。思いの外仕事が長引いてしまってな」
「問題ありません。お嬢様がお話相手になって下さったので」
「そうかそうか!それはよかった」
実に嬉しい、と言いたげなお父様に向かって敵意のある視線を向ける。するとさらに愉快そうな声で笑った。まったくもう……。
「では、お仕事の邪魔になるかと思いますので私はこれで失礼させて頂きますね」
と言って、何とかこの状況を脱することが出来た。
その日の夜、あたしはまたあの悪夢を見た。
なんだかいつもより寂しそうに映ったその瞳を、朝目覚めても忘れることが出来なかった。
「……あなたは一体、どこに行こうとしているの…?」
小さな疑問は、空気に飲み込まれて消えてしまった。
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作者名:恋都 | 作成日時:2020年12月5日 13時