12話 苗字と名前 ページ13
今日の昼休み、彼女が知らん奴と話してるのを見た。
角名に聞くと、4組の速水というらしい。
背ぇは角名と同じでくらいで高いし、顔もまあまあ良い、女子の理想とでもいうタイプなんやろうか。
そいつの隣で、顔を近くして話してる彼女を見て心が痛くなった。
俺と話す時と同じような笑顔を向けているのが、何故か嫌だった。
こんなこと考えてるなんて彼女には知られたくなかった。
嫉妬なんて恥ずいやんか。
「あ、確か1年の時に速水に好きな人いるって噂になってた時あったよ。もしかしたらそれ椎葉さんだったりしてね。」
俺の心の中を見透かしているのか、からかった様子で角名は言ってきた。
こいつ、絶対面白がっとるな。
でも、角名がそんなことを言うから、自分の中で焦る気持ちが増すのがよく分かった。
俺、重症やん。
ガヤガヤとした教室の中で、はっきりとではないが、2人の会話が途切れ途切れに聞こえてくる。
その中で、速水が椎葉さんの下の名前を呼ぶのが聞こえた。
は、なんやそれ。俺まだ苗字呼びやで。
俺よりも長く関わっている時間の差を見せつけられている気がした。
A。
そう呼べばええだけの話やけどな。
タイミング逃してもうたな。
いきなり下の名前で呼んだら、どんな反応するんやろか。
キモがられんかな。昨日まで苗字呼びやったし。
恋ってめんどいな、こんなことでもこんな考えてまうんや。
あかん、こんなんじゃ今日の部活でツムにどやされるわ。
小さくついたため息はきっと、彼女には気づかれていない。
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作者名：湯豆腐 | 作成日時：2023年2月28日 19時
