松田くんの彼女（仮） (ページ36)

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「本当に切っていいの?」

『うん、いいよ』

ﾊﾟﾂﾝとハサミが入ると同時に黒い髪の毛が床に落ちていく。

『わぁぁ、切れた』

「当たり前でしょ、切ってんだから」

美容師である兄のなおくん。
夜遅くにお店を借りてくれたから、思い切ってヘアチェンジをすることに。

「成人式まで伸ばすって言ってたのに」

『あ、確かに』

「てか元太くんと付き合ったのに？」

彼まで、元太くんのタイプを知っているのは私が教え込んでいたから。

『単純って言われたんだもん。だから、ちょっと対抗しようかと』

「子供か」

『いーの！』

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『めっちゃボブじゃん』

「ボブだねぇ、可愛い」

顎下までバッサリと切ってもらって次はカラーに入るとこ。

「色どうする？ブリーチする？」

『この際、もうハイトーンしちゃお』

ここは兄を信じておまかせオーダーに。

「うわー、絶対元太くん喜ぶ」

『だといいけど』

数時間後。

「いや、誰」

『自分で言うのもなんだけど、ほんっとに、誰』

ほんのりラベンダーのハイトーンベージュに染まった私の髪。
鏡に映る自分が自分じゃないみたいでちょっとドキドキしている。

「流石、俺の妹。何でも可愛いな」

『なおくんの腕がいいんだよ』

お互いを褒め合う兄妹。側から見たらカップルなんだよなぁ。

店の締めを終えてから、送ってもらって帰宅する。

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『ただいま、帰りましたぁー』

元太くんの家のドアを開ければ、ドタドタと廊下を走ってくる音が聞こえる。

「おかえ、り、って、え？！えっ！？」

『ふふっ、驚きすぎ』

待って、と目を見開いて止まっている。

『どうですか』

「いや、どうですかって。

可愛すぎんだけど」

『んふふ、やったぁ』

写真撮らせてっ！とあらゆる方面からカメラを向けられる。

撮影会かな…？

「ほんっと、心臓に悪いって」

『かなりのイメチェンでしょ』

「なおくんにやってもらったの？」

写真撮影を終えて、元太くんの膝の上に座ってゆっくりする。
座り心地良し。

『そう、さっき行ってきたの。長さも色もなおくんに任せたらこうなった』

「天才じゃん」

『ね〜』

くんくん、と髪の毛を掬って匂いを嗅がれる。

「さっきってことは、まだなおくんと俺しか見てないってこと？」

『そうなりますね』

「ね、好き」

『唐突すぎて、心臓止まる』

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