く り か え し 【 Reo.S 】

用意周到 ページ36

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『っ、はぁ、はっ、』



胸を抑えて乱れた息を整える

追いつかれる、そんな時に
タイミングよく来たタクシーに飛び乗った
お陰で佐野くんはもう見えなくなる程遠い


危なかった

今の佐野くんとずっと一緒にいたら心臓がもたない

ポロッと"好き"って言ってしまいそうだ



「お客さん、どこまでですか？」

『あ……』


"とりあえず出してください！！"

と、ドラマのようなセリフを言ってしまったばかりに
このタクシーはあてもなく走っている


家の住所を伝えようとしたその時



携帯が震えた


画面を見ると佐野くんからの着信だった
無視をすることもできたけど
後が怖いから出ないと



『すみません、ちょっと停めてもらっていいですか？』

「…はい、大丈夫ですよ」




すぅと深く深呼吸をする



『っ、もしもし』

〈今どこ？〉

『……家に帰るとこ』

〈じゃあ、いつもんとこ来て〉

『会いたくないからいや』


電話越しにため息が聞こえる
あ、イライラしてる……


〈別にいいけど。鍵俺が持ってるから〉


そう言い残してブツっと切れた音と平坦な電子音



『……は？』



鍵は俺が持ってるから……？？

まさか、と思ってキーケースを開けると
自宅の鍵が見事に無くなっていた



『やられた…！！』



初めから帰す気がなかったんだ

そうだよね
私の足じゃすぐ追いつかれるはずだもん



『すみません、××まで』

「はい」



運転手さんに行き先を告げ、タクシーが動き出す


佐野くんは朝からなにかおかしかった
私がこうやって逃げ出すのも予想してた……？

じゃなきゃ鍵を抜くタイミングがない


どうしろって言うのよ……


これ以上私に何を望むの？







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