礼服 ページ34
「やっぱり似合うわね。こういうの」
「あまり嬉しくないような……」
かっちりとした服はあまり好みではない悠里は、動きにくそうに自身の手足を軽く動かす。
「夏未の言う通り、よく似合っていると思うけどね」
「パパ」
「総一郎さん、あの、なんで急に礼服なんて……」
「なんでって…君、誕生日が近いだろう？前祝いとでも思ってくれ。
当日にはパーティを開くからな。そのためのものと思ってくれ」
「……あ」
「まさか、自分の誕生日忘れていたの？」
「ははは。まっさかぁ」
「その感じは忘れてたわね？全く……」
「いや、でもですよ？近いといってもちょうどフットボールフロンティアの全試合が終わる頃ですし、結構先なのでは……？」
答えようとした総一郎に代わって夏未が割り込むように答えた。
「だって、これから先では忙しくて買い物どころじゃなくなってしまうでしょう？だから早め早めに、よ」
「なるほど？」
「サイズもちょうどいいようだし、これで決めてしまおうか。じゃあ、それ一度脱いでくれるかい？」
「あ、はい。ってちょっと待ってください。俺の誕生日パーティ、ドレスコード付きなんですか？」
「嫌だったかい？」
「いえ、嫌というより、仮にパーティをするなら、もう少しみんなを呼びやすいものがいいな、と……」
悠里の控えめなその意見に総一郎は微笑んだ。
「そうか……確かにそうかもしれないね。でもそうだとしても、勝負服は持っていて損はしない。さ、ついておいで」
「……やっぱり買うことに変更はないんですね」
悠里のクローゼットに鎮座することになるこの礼服。埃を被ってしまうことになるのではないかという、悠里の予想を大きく裏切り、むしろあって良かったとすら思える服になるとは、今は誰も知らないことなのである。
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雨(プロフ) - アカヤさん» ありがとうございます！再開するので楽しんでいただけると幸いです！ (2021年3月18日 0時) (
レス) id: 9167c7bcd3 (このIDを非表示/違反報告)
アカヤ(プロフ) - すごい面白いです！更新お待ちしております！ (2020年10月3日 20時) (レス) id: c94cddf62e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨 | 作成日時：2020年2月9日 20時
