ユナカイト治療院にて！【派生作品】 (ページ10)

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ゲルマの独白≪2≫ ページ10

ある日、仕事先の玄関で待たされている間。
庭の方で芋虫のように這いずり外に出ようとする両足と左腕を切断された宝石人形を見た。
その姿があまりに必死で見ていられず助けようと思った訳ではないがいつの間にかその宝石人形に近づいていた。
私が来たことに宝石人形は一瞬ビクッとしたが私が何もせずただじっと見ていると唯一残った右腕をこちらに伸ばし、目元に水をため、声には出なかったが「助けて」と、確かにそう口を動かした。

そのあまりに人間らしい動きに相手が物であることを忘れ手をさしだそうとした時、家から主人が現れ宝石人形を捕まえた。

「これはこれはゲルマ先生、お待たせして申し訳ない。それにうちの宝石人形が迷惑をかけたようで…」
「いや、そこまでまっていないのだよ……」

主人に捕まえられた宝石人形は絶望したように目を濁らせ、もう一切動く気配はなかった。
罪悪感がわいた。
後ろめたい気分を誤魔化すように宝石人形から目を背け、その日は何時もより早く診察を終わらせた。そして逃げるように帰った。

あれは人ではない、物だ。
持ち物は持ち主が管理するものであって他人が勝手に手を出してはいけない。物を直すのは技術者であって医者の仕事ではない。
つまり、私があの場面で出来ることは無かった。……きっとそうだろう。

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