ハインと会話≪2≫ ページ18
それから特に会話もなく無言で治療を終えた。
幸い、導線が一つ切れて動けなくなっていただけでパーツを丸ごと取り替えるようなことはなく、全身の傷も特殊な薬品で埋めて隠し、見た目は傷など無かったかのように綺麗に戻った。
応急措置だが毎回パーツを買いかえていては破産してしまうので仕方ない。
ベッドから起き上がり動きを確認した後ハインは頭を下げた。
「ありがとうございます。代金は……」
「いいのだよ。今日の代金はいらないから、また治療院の手伝いにきてくれたまえ」
「何時もそれじゃないですか。たまには払わせて下さい」
「ここでお金を貰うより、色んな所から引っ張りだこの優秀な執事を雇う方が大変だろう?実際ハインに手伝って貰うと仕事の進みがいいし、とても助かるのだよ。それじゃダメかい?」
薬だけとはいえ宝石人形の治療はかなり高くつく。それを分かっているのでハインは治療費を払おうとするのだがどんな時もゲールマキナがお金を受けとることはなかった。代わりに治療院の手伝いを頼むのだ。
それがハインの仕事時間を減らす為の言い訳でゲールマキナの優しさだと言うことにハインは気づいていた。
「分かりました。それではまた手伝いにきます。……その、ありがとうございます」
ハインはもう一度お礼をいった。
その表情は来た時のような固さが少しとれ、どこか嬉しそうだった。
それを見てゲールマキナはニヤリと笑った。
「少しは元気がでたようで何よりなのだよ。いつでも来るといい、ハインの可愛い顔が見れるだけでお姉さんは嬉しいのだよ」
「からかわないでください。俺のどこが可愛いんですか」
ハインは呆れたように突っ込んでから、常日頃のツンとした態度に戻り「それでは、また」と言って部屋から出ていった。
ハインが出ていった後、一人になったゲールマキナはハインがいつもとかわらない様子に戻ったことに安心してため息をはいた。
そしてぽつりと独りごちる。
「いつか、心を治療することが出来るようになればいいのだがな」
宝石人形に心などないと無視していた奴が大層なことを言うようになったものだ、と自嘲気味に笑いゲールマキナは次の患者がくるまでの間、分厚い専門書を開くのだった。
おわり
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植木葉(プロフ) - フローズンヨーグルトさん» ありがとうございます!これからもちょくちょく書いていくつもりなので応援お願いします! (2021年2月7日 19時) (レス) id: b661ad5ecd (このIDを非表示/違反報告)
フローズンヨーグルト(プロフ) - こう言うのめっちゃ好きです! (2021年2月7日 17時) (レス) id: 4dab82179c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植木葉 | 作成日時:2021年2月7日 10時