刀が三本 ページ4
鍛刀をしておいて早速、事務仕事に取り掛かる。
ボールペンを真顔で紙の上に走らせて数分後、もう頭を空っぽにして無言でテキパキ手を動かせる。
無趣味な人間はいずれも大して頑張ったつもりもないのに、いつの間にか時間を余力を言われた事に費やしているものだ。
「主！」
「何」
「構ってよ暇！」
つい先程に引いた加州清光という刀は何かと愛を欲しているらしい、誰かが愛の反対は無関心と言ってたし構ってやる事も大事なのか。
「構ってって言われても何をすれば良いか」
「爪紅塗ってよ」
「爪紅？…ああ、ネイルか」
何か少しキラキラした笑顔を向けられる、ほれほれと言わんばかりに爪を寄せられる。
爪紅なんて古臭い言葉を使ってても、塗るものは最近の物。
ただの女性用の赤一色のネイル、妙にキラキラしていないし少し洒落てるこの子ならもっと着飾ると思ったけど違うよう。
「あ……ああ、う」
「主、下手」
「ぐっ」
なにぶん、やった事が一度もないわけで爪からネイルがはみ出てしまう。
指にかかって残念な仕上がりになってしまった。
「化粧やった事ないの？唇赤いのに」
「塗ってないよ、あ、でも化粧しなきゃなんないよなぁ仕事って」
「気付かれなかったんだ、見てくれは良いのに勿体ない…告白はされた事ある？」
それについては苦い思い出しかない、見た目は良いと自負している。
が、無趣味なことや心の内やちょっとした本音でも聞かれたらホイホイ逃げていく。
やっぱり性格が駄目なのだ、でも変える事が出来ないほどに…苛つきや負の感情が増えていった。
今でも鮮明に思い浮かぶ、趣味が筋トレと言った時のあの男のうわぁと言いたげの顔。
殴り飛ばしたくなる程の引き気味の顔、そこからだなやけ酒が多くなったのは
「主、目が…目が怖いよ」
その時の小鳥の顔は真顔で目が死んでいた、嫌な事を思い返すとこんな顔になるのは自分だけじゃないはずと言い聞かせるのはそれほど心が弱く繊細という事。
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作者名：楽凛 | 作成日時：2019年8月9日 1時
