転生した先は孤児で神主に拾われた (ページ37)

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三十六話目『絶体絶命』ページ37

持ってこられたのは、物ではない人だ。
椅子に座らせ括り付けられている、だが黒霧の中から中途半端に胴体だけが見えている状態。
その私と同じくらいの少女は目尻に涙を溢れんばかりに溜めて、恐怖に震えていた。

「何を…」

「君、人の死んだところは見ても殺されたところは見てないよね」

「！！」

「是非とも殺される瞬間を見ていきなさい、しかもヴィランにね」

急いで少女に近寄ろうとすれば、連れてこられた時のように水色髪の人に掴まれる。
今度は口元ではなく喉に、小指を浮かし四本指で喉笛辺りを締め付けられる。

「っあ…」

「大人しくしねぇと殺すぞ」

耳元で低い声でそう言われる、動いてしまったら殺される。
目の前に今にも殺されそうになっている子がいるのに、身体は動かないまま。
先に恐怖が勝っている、情けない、情けないと言い聞かせても動くことはない。

「殺せ」

「はい」

「！……助けてッ」

助けてという彼女の目は、その言葉通りに助けを求めている。
何もできずにいる私に、悲痛に叫ぶ声が私の何かを動かした。

「ぐっ……！？」

「…ッ！」

勢いのままに喉にある四本指を退かし、前に走る。
散々慣らしておいた個性を使う為、ポケットに入れてあった人型に切ってある白狼と書かれた紙を取り出し個性を発動させる。

「白狼！！」

「何やら凄いことになってるね」

「なっ……」

先生と呼ばれる人は驚きの声を上げた、これで彼女は助かる。
白狼は小さなその容姿とは裏腹に、大きな氷を作り上げて放ち辺り一面を凍て付かせようとする。