転生した先は孤児で神主に拾われた (ページ36)

今日:25 hit、昨日:3 hit、合計:42,746 hit

三十五話目『心の底では』ページ36

心底思っていたこと、早く同じようになりたい。
虚しく終わるのは嫌だ、だがその為には何をすべきか少し考えれば分かる。

「こちらに来なさい、その虚しさとやらを消してあげよう」

「でも私にはまだ、やるべき事があります…拾ってくれた人への恩返し、両親への謝罪…それと」

「自由と満たされた感覚を得る」

たった一つの小さいことを考えた、死ぬ間際にもういいと思える人生を送ること。
私が義理や人情、義務を果たそうとするのはお前が悪いと言われたくなかったからだ。
もっともらしい事を言って行動に起こして、自分が悪いと断定されたくなかった。
だからそれを人生でやり続ければ、幸せになる権利を貰えると心の底では思っていただろう。

「やるべき事がある、ね…君は思ったことはないかね？誰かを思う気持ちも助けたい気持ちも、その全ては結局は自分の為だと」

「！！……ッ」

「助けたい、死んだところを見て悲しくなりたくないから…ヒーローとして勝ちたい、悔しく思いたくないから」

私はどこまで歪みきっているのだろうか、自覚しているのは、悲しんでいるのは、自分に怒っているのは、何も感じないだけマシだと思われたいからだ。
下唇を噛み、俯いて押し黙るが声を振り絞って出す。

「…無駄話をする為に連れてきたのではないのでしょう、勧誘には断ります」

「君はヒーローに助けを求めるかね？…おっとすまない、そんな状況になったことはないだろう」

いきなり何を話し出すかと思えば、黒霧の名を呼び何かを持ってくるように伝える。
首を傾げて黙っていれば、持ってこられたモノに目を見開くことになる。