転生した先は孤児で神主に拾われた (ページ34)

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三十三話目『水色髪と赤目』ページ34

個性も慣れて神楽も飽きるほどやり込んだ、巫女や淑女としての振る舞いも習慣となり休む時間は増えていった。
なので今日はいつ帰ってもいい、遊びに行っても、焦凍も今日は来れないと言っていたし少し街を散歩して行こう。

「あんまり街は見て歩かないから、こうして見ると発見が多い…」

そうやって周りを見渡していたから、私が悪いのだが誰かと肩がぶつかった。

「おっと、ごめんね」

「いえ、こちらこそすみません」

「あれ？君、前人殺しって呼ばれてた子じゃないか」

「！！」

まだそこまで、顔まで覚えられる程だったのか。
矢張り噂は根付いているのか、フードを被った声からして男性の人は笑ってる。
水色の髪から覗く血のような赤色の目が、見透かされているようで息を飲む。
何かまずい事が起こりそうで、逃げようと体を反転し足を進めようとすれば

「ッ！？」

「まあ、待ってよ…ちょっとお話ししたい事があるからさ」

小指を浮かせている右手で口元を覆われる、心底楽しそうなその声色を聞けば頭に浮かぶ単語は一つ。
敵(ヴィラン)だ。

「はくろっ」

「ああ、やめておいた方がいいよ？
俺の個性は崩壊、五本の指で触れたものは崩れるんだ、生き物なら死ぬ
俺的にはいつ殺してもいいんだけど」

「駄目ですよ、数少ない人材です」

後に黒い気体のような人が現れた、初めて見るヴィラン。
犯罪者などこれまで見たことがなかった、何にせよ私が狙われる理由なんでないはず。
口元で凶器を振りかざされているような感覚を体験するなんて夢にも思わなかった。
身体が逃げることを拒否していた、死ぬかもしれないと。

「黒霧、早くしろ…手が疲れた」

「はぁ…少々手荒な真似ですが、すみませんお嬢さん、捕まっていただけますか」

黒霧と呼ばれる人は、モヤのような黒い気体で空間が作られる。
ゲートのような、あそこに入ってしまえば戻れない気がした。
逃げないと、でも身体が動かない。
段々と身体が吸い込まれていく、感じたことのない恐怖が自分を蝕んでいく。
思わず助けてと声が出そうになる、でも憚られる。

『まるで自分はどうなってもいいというように』

誰にもそんな事言われてないのに、自分で自分に枷をはめているような。
実際そうなのではないだろうか