転生した先は神主に拾われヒーローを目指すそうです (ページ30)

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二十九話目『夢は』ページ30

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今思えば、あの時の父も母ももしかしたら同じような状況だったかも知れない。
でもこの箱は…プレゼント箱は確かに、優しい父がそこにいた証明だ。

私は二人の為に、ヒーローになろうとしていた。

今は違う。
自分と誰かの他人の為にヒーローを目指している。

輪花の泣き腫らしたその顔をハンカチで笑いながらに拭き、よく言えたと背中を叩きながら優しく寄り添った。
とある公園に腰掛けて

「よく頑張りました。ですがこれまで以上に頑張らねばなりません」

「はい…」

悲観してばかりはいられない、世間も自分としてもそれを許さないのだから。
頑張って頑張って誰かに認められて、そして最後に自分に認められるようにならなければ自由には生きられない。

「夢ってありますか？」

「夢？」

「そう夢です」

この超人社会で多くの者が夢見るのは、ヒーローという職業。
人助けやヴィラン退治を生業とする職業。
その理由はカッコいいからとか、人を助けたいとか、中には昔あった悲劇を二度と繰り返さないとか言う大望を持って目指すもの。

「それでも中にはヒーローを恨んでいる人もいるのです。助けてくれなかったから…と」

「……」

「ヒーローは誰かを救ける為、存在する。人がいついかなる時も救けるのが普通らしいのです」

心底、納得いかなかった。
幾ら力を得ていようとも幾ら救けた数が多かろうとヒーローでも人なのだ。
限界はある。
それが普通として世に知れ渡り、救けられなかったら不満がヴィランでなくヒーローに向く。