保健室王子。(緑) (ページ6)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:9,311 hit

6. ページ6

チャイムが鳴って先生の話が終わり、急いで保健室に向かう。廊下は掃除中の人やお喋りしている人で溢れかえっていたが、気にせず廊下を突き進んだ。

「そういえばさー、私さっき例の組の男子が殴られてるの、見ちゃったんだよね」
「まじ？高校生にもなって？やっぱ荒れてるねーF組」

思わず足が止まる。心臓がバクバクとなって、息がしづらい。

「四階の廊下の角っこで全然目立たないから、一瞬わかんなかったよ。なんかめっちゃイケメンだったけど」
「それ大倉じゃない？ちらっと見たことあるけど、超かっこいい」
「なんであのクラスになっちゃったんだろうね、可哀想」

固まっていた足をなんとか動かして、階段を駆け上った。
四階の廊下を突き進んで突き当たりに着く。大倉くんが座り込んでいたが、周囲には誰もいなかった。

「あ、Aさんやん、どしたん」

へらっと笑って私を受け流そうとする。きっと服の中の傷は酷く痛むだろうに。

「大倉くん、保健室行こう。早く手当てしないと悪化しちゃう」
「嫌や！！……横山先生に見られたない」

強がってはいるけど、涙は堪えきれてない。鼻を啜る音も聞こえる。

「いつもこんな風にされてるの？」
「休み時間の度に。クラスの男子に殴られんねん。色目使うなって。女子も男子が俺をいじめてるからってハブったりしてくる」

ほんまガキ臭いよなあ、と瞳に涙を溜めながら笑う彼にかける言葉は、見つけられなかった。

「とりあえず手当はしなきゃいけないから、私がやるよ。C組行くけど、立てそう？」
「……立てると思うけど、一応手、貸して」

手を差し出すと、彼はしっかりとそれを掴んだ。