ふたりの世界。 (ページ21)

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21. 赤side ページ21

「……」

横との帰り道は基本無言かゲームの話しかせえへん。せやけど、今日の沈黙は普段のそれとは若干違った。

「今日ヤスおらんかったなあ」

「せやなあ」

何でもないような顔で相槌打っとるけど、俺は知ってる。横がまだ元カノが忘れられずにいることを。せやからヤスの話を持ち出すと、一瞬瞳が揺らぐんや。

「心配か？」

「別に。部活かなんかやろ。いきなり用事入ったんかも知らんし」

せやなあ、と横と同じように返す。俺の真似すんなやとムキになる横を適当に流して一呼吸置く。

「なあ、」

ん？と聞く横に、俺は思わず立ち止まった。どうしたん、と怪訝な顔をする横を見ても、前に進む一歩が踏み出せない。

「……何でもない。聞きたいことあってんけど、忘れた」

何が聞きたかったのかも分からないままはぐらかしていつも通りになる。横はそれを知ってか知らずか無言で歩き始めた。

家に着き、おかんの飯を食べて風呂に入ってぼーっとテレビを見る。俺が聞きたいことは果たして何なのか。テレビに飽きて自分の部屋でギターを爪弾きながら考える。

「大倉のことはどう思っとんのか……」

言ってしまって思わず口を塞ぐ。あかん、違う、こんなん誰にも言うたらあかんのに。

大倉のことを考えたらギターを弾く手も、思考も止まる。

「大倉泣かせたら、しばいたろ」

無くは無い未来。想像してしまえば止まらず、思考から逃げるように布団に潜った。