愛してるのに愛せない (ページ24)

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不安定 sideA ページ24

『A。ただいま。』

いつもより、乱暴にドアを開けた剛くんに何か異変を感じた。

『A。A。なぁ……。』

剛くんの顔を見たら号泣していた。

『どうしたの……。』

『捨てんよな？Aだけは、俺の事捨てへんやろ？』

震えた手で抱きしめられた。何がなんなのかわからない私は、剛くんの顔を見た。

『なぁ、答えてくれよ。A。捨てへんよな？お前は俺の味方だよな。』

『捨てないよ。捨てないから教えて。何があったの？』

『……母さんに会った。』

剛くんの……お母さん。

そう言えば、前も剛くんお母さんに会ったって言って泣いてすがってきたことあったっけ……？

そのまま剛くんは、私の腕を力一杯握りずっと泣いていた。

剛くんの闇は、途方も無く深い。

その闇が何なのかは分からないけどそれでも、闇が深い事はすごく分かる。

『剛くん……。』

『引っ越さへん……？二人だけの世界に。誰も知らない世界に。』

……剛くんは、そんなことを言い始めた。

引っ越すということは、光一と会える確率がまた減る。

……だめ。もう光一のことは、忘れるんだ……。

『ここは離れたくない……。』

『光一がいるから？』

剛くんの目が真っ黒になった。

『引っ越したら光一とは今度こそもう二度と会えないもんな？』

『違っ……』

『全部お見通しやねん。……きーめた。お前が光一への未練を無くすために、光一がお前のこと嫌いにさせてやるよ。』

あぁ、平和に暮らせると思ったらまたこうなってしまった。

『お前の事を愛してんのは、俺だけでええねん。』

何時になったらこのループから抜け出せるんだろう。