10話 ページ10
.
「誰もいねぇじゃん」
薬品の匂いがする保健室はどこか落ち着く。
宇髄先生は私の体に気を利かせてゆっくりとベッドに寝かせてくれた。
「取り敢えず、熱測っとけ」
「…はい」
体温計を渡され、脇に挟んで体温を測った。
いつもは途切れることの無い会話が途切れて少しの沈黙が流れる。
だが、その沈黙を破ったのは意外にも宇髄先生だった。
「最近、シフト多くしたのか?」
「あ、はい。来週は考査一週間前なので勉強に専念したいので」
進学校のため勉強を怠るわけにはいかない。
勤勉とまではいかないけど、勉強は頑張ってる方だし好きっちゃ好きだから取り組んでいる。
根は真面目なのよ。根はね。
「お前なぁ、もうちょっと自分に甘くても良いんじゃねぇの?」
頭を撫でた後、涙目になっていた私の目元を優しく指の腹で拭きとった。
「やです。頑張りたいんです」
「何だそれ」
バイトは大学費用のため。ただで進学校通わせてもらってるのだから、大学ではあまり親には負担をかけたくない。
でも、それよりも最近は宇髄先生が来るのを待ち遠しく感じてしまっている。
先生と話していると、バイトも頑張れるって言うかなんというか。
嫌なことがあっても宇髄先生パワーでその日1日は乗り越えられる。
なんて本人に言ったら小馬鹿にされるから辞めておこう。
「んじゃ安静にな」
「え…行っちゃうんですか?」
保健室のドアを手にかける宇髄先生。
「居た方がいいか?」
そりゃあ、心細いしいた方がいいに決まってる。
首を縦に振った。
「そうか」
そう言ってベッドの上に腰掛けた。
その声はどこか弾んでるように聞こえた。
「何ですか先生。その顔は」
「いや、熱あるとこんな素直になるんだな」
「………いつも素直ですけど」
「嘘つけ」
でこぴんを喰らった。
私、病人なんですけど。
96人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かずさ(プロフ) - えっっ更新やめるんですね……。残念です。 (2019年11月13日 17時) (レス) id: 339945d703 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - 電車の中で読んでいてにやにやしてしまいました笑(マスク付)これからも無理せずに頑張ってください!楽しみにしてます! (2019年11月5日 16時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
ちせ(プロフ) - カズハさん» ご愛読ありがとうございます〜!今後ともよろしくお願いします<(_ _*)> (2019年10月24日 16時) (レス) id: bcabc46e74 (このIDを非表示/違反報告)
カズハ(プロフ) - あぁあ…最高です〜…照れて蹲る天元様萌えます…更新頑張ってください!! (2019年10月24日 1時) (レス) id: 082d86be6d (このIDを非表示/違反報告)
ちせ(プロフ) - もちさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます…泣 読者様の期待に応えられるよう、頑張ります!今後ともよろしくお願いします<(_ _)> (2019年10月22日 9時) (レス) id: bcabc46e74 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちせ | 作成日時:2019年10月19日 23時