106 ページ6
「今日ね、戸籍謄本を取りに行ってね。
お父さんはね、私の本当のお父さんじゃなくて、私の本当の両親はもう亡くなってて……。
だからね、お墓参りに行ってきたの。
連絡しなきゃって思ったんだけどね、携帯の電源切れちゃって。
それで急いで帰ってきたんだけどね、お腹すいちゃってファミレスで夕飯食べてきたの。
いちごパフェ、すっごく美味しかったよ。
まさかそんなに心配してるなんて思わなくって……。ごめんなさいー……!
もう何言ってんのかわかんないよね……!!」
親に叱られて泣く子供みたいに頭の中で伝えることが上手く整理できない。
そんな私の話を、相槌を打ちながらしっかりと聞いてくれる梓くん。
その優しさが身にしみて、夜とはいえ街中なのにもかかわらず、大泣きしてしまった。
いい大人が子供のように恥ずかしい。
「まったく、本当に……。はぁ……。」
梓くんは溜息を一つ吐くと安心させるような笑顔で笑って、私の手を取った。
「帰ろう、僕らの家に。
家に着くまではこの手、離さないよ。勝手にどこかに行かれたら困るからね。」
「別に勝手にどこかになんて……行ってないし。」
「どの口が言ってるのかな?」
「ひぇー……。」
返す言葉もなく、情けない声を上げるしかできない。
「……ねえ、A。」
「ん、何?」
「今度、僕も一緒にお墓参りに連れて行ってくれない?」
「え、いいけど……。なんで?」
「え?」
「え、何?なんで聞き返された?」
「ああ、いや。そうだね……、家族だからかな。うん。」
歯切れ悪くそう答える彼の頬はなぜか少し赤くなっていた。
……そんなになるほど一生懸命に探してくれたのかな、なんて。
ちょっと嬉しい、かも。
15人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:にじまつ | 作成日時:2020年4月16日 12時