嫌よ嫌よも好きのうち《 Shoma.Uno 》 (ページ5)

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昌磨.

「……」

『……』

一緒に帰ろうと誘ったのは俺なのに、話題が何もないことに今更気付いた。ゆづくんの話を振れば「あんたに何が分かるのよ」とでも言いたげな目で見られるのを俺は知っている。狂気的なファンは怖い。

練習終わりで疲れている脳をフル活用して、何とか話題を思い付いた。

「……A、次はどこの大会に出るの？」

『え、あ、……クープドプランタン杯。昌磨も去年出てたよね』

「あー……あれか。」

『……悪かったわね、世界選手権に出れなくて』

「誰もそんなこと言ってないでしょ」

きっと俺がいつも通り意地の悪い答えを返すと思い込んでいたAの顔は、文字通りぽかんとしていて、何だか面白かった。

自分でもいじめすぎてしまうのは良くないと分かっている。でも、それがいつの間にか俺たちの普通になっていたから。今更変えられない。

「まあ……Aなら大丈夫でしょ。」

『……何それ』

「別に。お前が負けず嫌いなのも努力家なのも、小さいときから知ってるから。それだけ！」

急に恥ずかしくなってきて、じわりと顔が熱くなる。赤くなっている顔を見られないためにも数歩先を歩くと、「待ってよ」と慌てて着いてくるA。

『……昌磨が優しいと気持ち悪い』

「は？そこはありがとうだろ、可愛くない」

『可愛くなくて結構！』