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昌磨.
「……困ってるから、離してあげて」
『しょ、ま、』
悪い奴ではないんだけど……お酒を飲むと泣いたりしつこくなったりするから、そこは面倒な同期。Aから引き剥がすようにして距離を取らせると、「ごめんごめん」とすんなり引いてくれた。
「反省してるから許してやって」と俺が言うと、Aは何も言わずに、こくりと頷く。
「……あー、ごめん。美穂子先生に呼ばれてたんだった。行こう、A」
『え……』
「じゃあ、お先に。」
全員にぺこりと頭を下げて、Aの手を引いて外に出た。まだ少しひんやりとする春の夜は、頰の熱さを冷やすのに丁度良かった。
少し歩いてから足を止めると、Aは「ありがとう」と小さな声で呟いた。「どういたしまして」と振り返ると、そこには見たこともないほど弱々しく唇をきゅっと結ぶAが。
「A?大丈夫……」
そう言って顔を覗き込むと、その大きな目には涙が浮かんでいて、俺を見て瞬きをした途端、ボロボロと溢れ出してしまった。
何年も一緒にいるけど、泣いてるところなんて数えるほどしか見たことがなかった。それも、試合以外の女の子としての涙は初めてで。とりあえず泣き止んでほしいのに、何をすればいいのか分からない。
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きな子(プロフ) - こんにちは。こういう、両片思い的なお話が大好物ですw更新を楽しみにしてますね! (2018年4月8日 14時) (レス) id: 23779469f6 (このIDを非表示/違反報告)
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