嫌よ嫌よも好きのうち《 Shoma.Uno 》 (ページ29)

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貴方.

「もっと身体締めて、小さくして……」

近い。いや近すぎるだろ。教えてくれるのは凄く有難いよ。でもね、流石の私たちにも「男女の距離感」は必要なわけで……

元々男女の境界線が曖昧なフィギュアスケート界では、腰に手を回して写真を撮るなんて当たり前のこと。それが嫌と思ったことはないけど、気になりはする。

今は後ろから抱き締められるような体勢で、4回転フリップを跳ぶときの姿勢を教わっている。きゅっと身体を締めて跳んでほしいらしく、物凄い勢いで押される。いや、普通にやばいわ気付けよバカ。

「……A？聞いてる？」

『き、聞いてるよ、？』

「そう。顔赤くない？また熱でも……」

誰のせいだよ！！そう思ったときにはもう遅くて、「離れろボケ！」と言おうとしたのに、なぜか照れてしまって「近いから……」と細くなる声。

昌磨はそれでやっと気付いたのか、焦ったように「ごめん！」とパッと離れた。それでいい。……そこ！にやにやしないの、満知子先生。

「じゃあ……跳んでみて、」

『う、うん……ありがと』

ギクシャクしつつも時間的に最後のジャンプになりそうだったので、気持ちを入れ替えて跳んだ。

自分でもかなり高く跳べたと思ったけど、初日から跳べるわけもなく、思いっきり転倒。それでも手応えを感じたのか、「明日には跳べてるよ」と昌磨が笑ってくれたのが嬉しかった。