嫌よ嫌よも好きのうち《 Shoma.Uno 》 (ページ20)

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昌磨.

『わーっ、星！ねえ！』

「毎日見てるでしょ」

『何か綺麗だよ、今日』

タクシーから降りて、家までの数分間をゆっくりと歩く。何だか今日は歩きたい気分、そうAが言ったから、わざわざ最寄り駅で降りたのだ。
春は目の前だけど、まだまだ寒い。ポケットに手を突っ込んで暖をとる俺を見て、Aは笑った。

『昌磨、おじいちゃんみたい』

「だって寒いじゃん」

『んーん。20歳ならまだ我慢できる』

「ちょ、引っ張んなって」

なぜか片手を全力で引っ張られて、無理矢理ポケットの外に出される。何するんだよ……と力なく呟くと、今度はAが俺のポケットに手を突っ込んだ。それも遠慮なく。

『あったか！すご！』

「人のポケットに手入れる奴いる？」

『昌磨の限定～』

「何だそれ」

そう言ってそのまま手を入れたまま歩くもんだから、手が塞がって危なくて仕方ない。渋々と同じポケットに手を入れ、支えるためにもその手に触れた。初めからそれを狙っていたのか、にやにやと笑うAの横顔に「きも」と照れ隠しの言葉をぶつけた。