押してダメなら押し続けろ II《 Shoma.Uno 》

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貴方.



『お腹いっぱいになると眠くなる……』

「Aってよく食べるのに太らんよな」

『甘いものは避けてるからね。あと、シーズンオフに太るだけ太ってる』

「その後どうするの？」

『三食サラダにして毎晩走り込み生活』




私のその言葉に、「うわあ……」と顔を顰める昌磨くん。「鬼やな」と笑う真凜。まあ、太るのも自己責任だし、自分自身を痛めつけるのに理由はいらないだろう。

体型の変化でジャンプが跳べなくなったら大変だし、綺麗に見せるためにも体重は気にしておかないと。




「それだけ徹底してるから4回転跳べるのか……」

「昌磨くん、それはもう才能やと思う」

『才能なんて……ロシアの環境が私に合ってただけ。真凜も新しい環境にすぐ慣れるよ、きっと』

「……そういうところずるいよなあ、好きやわ、」

『ふふ、帰国するときは絶対会いに来てね』




ぎゅっ、と抱き着いてくる真凜を受け止めて抱き締め返す。そんな私たちを優しく見守ってくれる昌磨くんの方を見ようとしたとき、私の携帯が鳴った。

「先行ってて」と二人を促して、少し離れたところで電話に応える。着信相手は誰か分からない。




『もしもし、楠木です、』

「……A？私よ、」

『え、……』




凛とした声。日本語でも英語でもないロシア語。聞き慣れていた強い声は、私が憧れている人のもので。




『ユーリャ……』

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